【人材サービス】2021年のM&Aは前年と同じ27件|アウトソーシング、UTの製造系2社が牽引

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写真はイメージです(東京・品川)

2021年の人材サービス分野のM&A件数は27件(適時開示ベース、12月27日時点)と前年と同数の高水準で推移した。コロナ禍の出口は見えていないものの、慢性的な人手不足にあえぐIT関連を中心に製造・技術系派遣が好調に推移していることが原動力の一つになっている。ただ、取引金額が100億円を超える大型買収は姿を消し、全体として小粒な案件が目立った。

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コロナ禍の初年度にあたる2020年は経済活動の縮小に伴い、産業界では派遣社員を削減する動きが広がり、人材サービス各社も逆風にさらされた。しかしながら、M&A意欲はむしろ増し、過去10年で最多だった2018年の30件に迫った。2021年もこうした基調に大きな変化はなく、ポストコロナを見据えて、M&Aへの取り組みが活発化した。

アウトソーシング、豪州企業を子会社化

なかでも存在感を発揮したのはアウトソーシングとUTグループだ。いずれも製造・技術系派遣をメインとする。アウトソーシングは年間6件のM&Aを手がけ、これにUTグループの3件が続いた。

アウトソーシングは豪州で政府や自治体など公共セクター向けホワイトカラー人材の紹介・派遣を手がけるHorizonOne Recruitmentを傘下に収めた(金額は非公表)。同社はここ数年、英国、ドイツ、オランダや豪州でM&Aを積極的に進めており、2020年にはアイルランドのCpl Resourcesを約390億円で買収する大型案件に取り組んだ。

残る5件はいずれも国内案件で、愛知県や新潟県、北九州市などの地場企業が中心。その中には“変わり種”として交通誘導警備・雑踏警備請負の企業も含まれる。警備請負はエッセンシャルワーカー(日常生活の維持に必要不可欠な働き手)領域として堅調な市場拡大が見込めるうえ、50歳以上の就業機会を確保することでグループとして雇用の長期化が期待できる事業と位置付けている。

実はアウトソーシングのM&Aは人材サービス分野の6件にとどまらない。2021年は電気通信工事で3件の買収(うち2件は海外)を実施しており、M&A件数はトータルで9件に上り、全産業ベースでもトップを争う。

UTグループ、30億円超の買収が2件

UTグループは3件中、2件が取引金額30億円を超え、金額公表分として今年のトップクラスの案件を手がけた。製造業向け業務請負や人材派遣をグループ3社で展開するスリーエム(愛知県豊橋市)を約33億円で子会社化した。同社は30年を超える業歴を持ち、ブラジル国籍を中心に95%以上を外国人社員が占める。同じく東海地区で、プログレスグループ(愛知県岩倉市)を約31億円で子会社化したが、こちらも日系外国人を主体とする。

外国人労働者の活用を巡ってはコロナ禍が収束を見通せない状況下、出入国規制などの影響を受けているが、国内の慢性的な人手不足を背景に中長期的に需要は拡大の一途をたどると見られている。日総工産も、半導体や精密機器などの製造請負を主力とするベクトル伸和(愛知県知立市)の子会社化に踏み切った。

異業種による人材サービス業の取り込みも

5G(高速通信規格)対応やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などで即戦力のエンジニアが求められるIT関連では新たな動きも出ている。

ソフトウエアテスト事業のSHIFTがスイスのアデコ傘下でフリーランスエンジニアに特化したマッチング事業を手がけるA‐STAR(東京都渋谷区)を、ゲームソフトの不具合検出を主力とするデジタルハーツホールディングスがIT人材登録プラットフォーム事業のアイデンティティー(東京都新宿区)を子会社化するといった具合に、異業種からの人材サービス分野への参入が比較的目立つ。

“ウィズコロナ”時代をどう乗り切り、新たな成長の扉を開くのか。その布石づくりに向け、2022年も人材サービスを巡るM&Aの機運はさらに高まりそうだ。

◎2021年:人材サービス分野の主なM&A(HDはホールディングスの略)

発表 買い手 対象企業・事業
1月 アウトソーシング 公共セクター向けホワイトカラー人材紹介・派遣の豪HorizonOne Recruitment
2月 UTグループ 製造業向け人材サービスのスリーエム(愛知県豊橋市)
3月 SHIFT アデコ傘下でフリーランス向けマッチング事業のA‐STAR(東京都渋谷区)
フーバーブレイン IT人材派遣のGHインテグレーション(東京都新宿区)
4月 広済堂HD 物流倉庫業向け人材派遣のエヌティ(埼玉県鴻巣市)とNeo(同)
UTグループ 人材派遣・請負事業のプログレスグループ(愛知県岩倉市)
5月 デジタルハーツHD IT人材登録プラットフォーム事業のアイデンティティー(東京都新宿区)
8月 日総工産 製造請負を主力とするベクトル伸和(愛知県知立市)
UTグループ 富士通傘下で人材派遣の富士通エフサス・クリエ(川崎市)
9月 クラウドワークス IT人材ダイレクト型マッチング事業のコデアル(東京都千代田区)
アウトソーシング 製造業・物流業向け人材派遣のISC就職支援センター(水戸市)
11月 三井物産 人材紹介・メンタルヘルスのヒューマン・アソシエイツ・HD(マザーズ上場)

文:M&A Online編集部

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2021/12/27

2021年の小売業界では前年に続き「争奪戦」が勃発し、関西スーパーの経営統合に対してディスカウントスーパーのオーケーが待ったをかけた。カインズは生活雑貨大手の東急ハンズを、イオンは100円ショップ大手のキャンドゥを買収することになった。

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