【ABCマート】10年ぶりにM&A、セブン&アイ傘下の「オッシュマンズ」を買収

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「ABC‐MART」新宿本店(東京・新宿)

110億円で米ラクロスを大型買収

ABCマートが前回のM&Aを手がけたのは2012年にさかのぼる。約110億円を投じ、「Danner(ダナー)」などのブーツブランドを展開する米ラクロス・フットウエア(オレゴン州)を買収したのがそれだ。ABCマートとして過去最大のM&Aで、米欧でのグローバル展開などを狙いとした。

「Danner」は1932年に誕生し、世界初の防水素材「GORE‐TEX」を使ったアウトドアブーツを製品化したことで知られる。

2014年には子会社化したラクロスを通じて、同じくブーツメーカーの米ホワイツブーツ(ワシントン州)を傘下に収めたが、小規模な案件で、ABCマートとしてラクロス買収後は事実上、M&Aから遠ざかっていた。

ABCマートが海外事業に乗り出したのは2000年代以降。2002年に韓国ソウルに現地法人を設立し、海外1号店を出店した。続く台湾では2010年にシューズ販売の現地企業(現ABC‐MART TAIWAN、新北市)を買収し、出店を始めた。

2021年11月末時点でABCマートの店舗数は1409。内訳は国内1059、海外350(韓国282、台湾61、米国7)を数える。

「自社企画商品」が売上高の3割以上

ABCマートの前身は1985年、靴や衣料の輸入販売商社として始まった。1990年に小売部門に進出し、東京・上野に「ABC‐MART」1号店をオープンした。

2002年に100店舗、2009年に500店舗、2015年に1000店舗、2019年に国内だけで1000店舗を達成した。国内のシューズ市場は現在1兆4000億円規模とされるが、その中でABCマートは1割超のシェアを持つトップ企業に躍進を遂げた。

同社の強みは「HAWKINS」「VANS」など知名度の高い自社ブランドを多数持ち、シューズを商品の企画開発・製造から販売まで一貫して手がけていることにある。接客を通じて得た消費者の最新ニーズに素早く商品開発に取り入れられる利点も大きい。自社による企画開発商品は売上高の3~4割を占め、収益力の高さにつながっている。

M&Aにアクセルを踏む転機に?

ただ、足元はコロナ禍の影響を免れない。2021年2月期は売上高19%減の2202億円、営業利益55%減の195億円、最終利益35%減の192億円。なかでも売上高は上場以来初の減少となった。2022年2月期は反転を見込むが、それでもコロナ前の水準にはほど遠い。

持続的成長の実現に向けて課題は山積している。人口減などで国内のシューズ市場が縮小に向かう中、スポーツアパレル、レディース、アウトドアなどの新マーケットへの展開は待ったなし。「ABC‐MART」を中核とするリアル店舗では商圏や顧客層に応じた店舗業態の開発、またネットによるデジタルコマースの推進も必須だ。

ABCマートが今回、10年ぶりにM&Aの封印を解いた。一連の経営課題に対処するためM&Aにアクセルを踏み込む転機となるのか、要ウオッチといえそうだ。

◎ABCマートの主な沿革

出来事
1985 靴、衣料の輸入販売商社「国際貿易商事」を都内に設立
1987 インターナショナル・トレーディング・コーポレーションに社名変更
1990 小売部門をスタートし、「ABC‐MART」1号店を東京・上野に出店
1994 「VANS」(米国)の国内商標使用契約を締結
1995 「HAWKINS」(英国)の商標権を買収
2000 店頭市場(現ジャスダック)に株式上場
2002 エービーシー・マートに社名変更
韓国ソウルに現地法人を設立し、海外1号店を出店
東証1部に上場
2006 初のレディース専門店「NUOVO」を東京・渋谷に出店
2009 500店舗を達成
2010 台湾の靴販売会社ジョイントパワーインターナショナル(現ABC‐MART TAIWAN)を子会社化
2012 ブーツメーカーの米ラクロス・フットウエア(オレゴン州)を子会社化
2013 国内初の靴製造工場「ABC SHOE FACTORY」(石川県志賀町)を設立
2014 ラクロス・フットウエアを通じて、米ホワイツブーツ(ワシントン州)を子会社化
2015 国内・海外合わせ1000店舗を達成
2017 韓国200店舗を達成
2019 国内1000店舗を達成
2022 スポーツ用品販売のオッシュマンズ・ジャパン(東京都千代田区)を3月1日に子会社化へ

文:M&A Online編集部

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