5月25日に東京都を含む5都道県の緊急事態宣言が解除されました。4月7日の宣言から約7週間ぶりの全面解除により、公共交通機関や繁華街に人が戻り始めています。6月19日からは全国の移動解禁となる見込みで、本格的な経済活動の再開となります。

スポーツジム、カラオケ、ホテル、旅行など、緊急事態宣言で壊滅的な打撃を受けた業界は多々ありますが、身近なところで影響が大きかったのが外食、とりわけ居酒屋業界です。一般社団法人日本フードサービス協会によると、緊急事態宣言下の2020年4月の居酒屋全体の売上高は前年同月比9.7%。客数は12.6%という過去に例がない水準にまで落ち込みました。

居酒屋経営者からは緊急事態宣言の第2波襲来を危惧する声が聞こえてきますが、それよりも恐ろしいのは新型コロナウイルスが終息した後。リベンジ消費の山を越えた先にある、中長期的な外食景気の冷え込みの谷です。この記事はポストコロナの居酒屋産業の未来を予測するものです。以下の情報が得られます。

・ポストコロナの消費者の変化
・中長期的に経営が厳しいと予想される居酒屋の出店形態
・苦境に立たされた居酒屋企業はどんな手を打つか

新型コロナウイルスで人の移動量は11%減少

居酒屋
居酒屋はかつての賑わいを取り戻すことができるか(画像はイメージ Photo by PAKUTASO)

今回の非常事態宣言により、外食環境に与えた要素は大きく4つあると考えられます。

1.消費者の心理的なマインドの変化
2.消費者のライフスタイルの変化
3.就業スタイルの変化
4.企業の業績の悪化

新型コロナウイルスによって、消費者は三密行動を避ける習慣が身に付きました。密閉空間で人が密集し、密接に人と関わる環境です。居酒屋がまさにこれに当てはまります。特に個室空間に大勢が集まり、同じ料理をともにする宴会は心理的に避けられる可能性が高いです。また、衛生管理が行き届いているか心配しているため、見知らぬ店に入ろうという意識が減退します。この消費者心理から解き放たれるのは、相当な時間を要すると考えられます。

非常事態宣言は消費者のライフスタイルも変化させました。公共交通機関の利用者が急減し、車を利用する頻度が高まりました。定額制カーリースサービスのナイル(本社:東京都品川区)の調査によると、緊急事態宣言で車の利用が増えたと答えた人は全体の20%に達しています。車の利便性に気づいた人は、公共交通機関を利用する機会が減ります。こうしたライフスタイルの変化も居酒屋利用を遠ざける要因の一つとなります。

リモートワークやテレビ会議が増えるなど、就業スタイルにも大変化が起こりました。通勤・通学をする人は減り、不要不急の出張もなくなることが予想されます。経営戦略コンサルティングのローランドベルガー(本社:ミュンヘン)の出した予測によると、日本全体の人の移動量は緊急事態宣言により11%程度減少するとしています。物理的にも人が減り、心理的にも居酒屋の利用が控えられる。これがコロナ終息後の居酒屋産業を取り巻く世界です。

そして最大の衝撃が企業の業績が悪化し、大規模な宴会が控えられることです。ソフトバンクグループ<9984>が1兆9000億円の営業損失を計上するなど、新型コロナウイルスが名だたる企業に与えた損失は甚大。経費削減の観点から企業宴会は減少します。その影響が如実にあらわれるのが、居酒屋が最も稼ぐ12月の忘年会シーズンです。