焼肉店のM&A(合併・買収)がじわり増えている。上場の外食企業が買い手となる案件は昨年ゼロだったが、今年はこれまで3件を数える。ターゲットはいずれも都内に本拠を置く焼肉店。同業同士は1件で、残る2件は居酒屋チェーンが新業態として「焼肉」に取り込むケースだ。

チムニーが焼肉店に参戦

海鮮居酒屋で知られるチムニーは焼肉業態に進出する。12月1日付で、都内や埼玉県で「牛星」など焼肉店10店舗を経営するシーズライフ(東京都渋谷区)の全株式を取得して子会社化する。買収価格は非公表。

シーズライフは2011年に設立し、直近売上高は約8億7300万円。焼肉「牛星」8店舗、焼肉「山河」2店舗のほか、居酒屋「熟成魚うらら」1店舗を運営する。首都圏以外では香川県内に「牛星高松空港通り店」を唯一出店している。

チムニーは「はなの舞」「さかな道場」「豊丸水産」などのブランドで全国732店舗(9月末)を展開する。海鮮居酒屋以外に、鶏肉や串焼き、もつ煮といった専門店も持つが、焼肉業態はこれまで手がけていなかった。居酒屋業態は競争激化や客足減少などで苦戦が続いており、新業態の開発を課題としていた。

2018年11月には、チムニーの親会社である酒類販売大手、やまやが「つぼ八」を日鉄住金物産(現日鉄物産)から買収。現在、チムニーとつぼ八を合わせた店舗数は約920店舗で、規模拡大による調達コストの削減などを進めてきた。

そうした中、チムニーが繰り出したのが焼肉業態への参戦。戦線拡大に向けて第2、第3のM&Aも十分に考えられる。

海鮮居酒屋を展開するチムニー、M&Aで「焼肉」業態を取り込みへ(写真は東京・三鷹)

海帆も焼肉に初挑戦、都内で立ち食い店「治郎丸」買収

今年5月、飲食業の弥七(東京都港区)から立ち食い焼肉「治郎丸」を買収したのは海帆。海帆は名古屋で居酒屋「なつかし処昭和食堂」を中心に、レストラン、ギョウザ、油そば、タンメンなどの約90店舗を運営するが、焼肉は初挑戦だ。

「治郎丸」は比較的珍しい立ち食いスタイルの焼肉店。寿司屋を思わせるカウンター席に小さなコンロが置かれ、好みの肉を一切れずつ注文できる。値段は1切れ30円から高級なもので300円ほど。新宿、渋谷、御徒町、秋葉原、大井町、荻窪の都内6店舗がある。

都内では2011年に出店した1店舗(池袋、居酒屋)にとどまっていたが、「治郎丸」の買収で本格的な足場を築いた形だ。今後、本拠地の名古屋で「治郎丸」ブランドを投入することになるのかどうか注目される。

海帆が5月に買収した立ち食い焼肉「治郎丸」(東京・荻窪)

あみやき亭、ホルモン専門店を傘下に

中部地区を地盤に焼肉チェーンを展開する、あみやき亭は4月、「ホルモン青木」で知られるホルモン焼肉専門店を都内で6店舗展開する杉江商事(東京都江東区)の全株式を取得して子会社化した。あみやき亭は中部と関東で合計266店舗(10月末)を展開するが、関東ではとくに都心部への出店加速を課題としていた。

傘下に収めた「ホルモン青木」は行列店としても知られる“名店”。あみやき亭は関東で焼肉業態の店舗として「スエヒロ館」「炭火焼肉かるび家」「ブラックホール」を展開するが、いずれも買収で傘下に収めている。

あみやき亭が買収したホルモン専門店(東京・亀戸)

外食M&Aで焼肉店が草刈り場になる可能性も

上場企業に義務づけられた適時開示情報をもとに、M&A Online編集部が調べたところ、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)件数は今年に入り697件(11月11日時点)。業種別では外食関連が26件あり、このうち焼肉店を買収先とする案件は3件と全体の1割強を占める。昨年までの過去3年間、焼肉店がターゲットだと明確に認められる案件は見当たらず、今年は一転、M&Aが再燃した格好だ。

外食産業では市場が縮小に向かう中、新業態の取り込みや既存業態のスクラップ・アンド・ビルドが課題となっており、その過程で今後、焼肉店がM&Aの草刈り場になる可能性も考えられる。

過去、焼肉業界の大型M&Aとして思い出されるのは2012年、「牛角」を運営するレインズインターナショナルの買収劇だ。居酒屋「甘太郎」などを展開する外食大手、コロワイドが約140億円を投じて傘下に収めた。翌2013年には、回転寿司店「平禄寿司」などで知られるジー・テイストが「焼肉屋さかい」を運営する、さかい(当時ジャスダック上場)を吸収合併した。

文:M&A Online編集部