新型コロナウイルスの営業自粛要請を受け、2020年4月のワタミ<7522>の既存店売上高が前年同月比で7.5%、鳥貴族<3197>が3.9%と、居酒屋企業がかつてない異常事態に見舞われています。2月に入って国内の感染者が増加しはじめてから、わずか3か月ほどでこれまでの常識が一変する大惨事に陥りました。居酒屋企業各社は手元の現金を確保しようと金融機関から大型の資金調達を重ねています。

そんな中、一部エリアの緊急事態宣言の解除や大阪府の1日の感染者がゼロになるなど、明るい兆しが見えてきました。全国の店舗が営業再開に向けて準備をしています。

しかし、新型コロナウイルスの本当の山場がやってくるのは、緊急事態宣言があけた後。就業スタイルの変化や、企業宴会の縮小、間隔をあけるための席数の減少、消費者マインドの変化により、中長期的には居酒屋だけでなく、焼肉店、レストランなどの利用者が減るとみられていることです。かつての売上の80%ほどが当たり前の時代となるかもしれません。その外的環境の変化によって、企業に壊滅的な打撃を与えかねないものが「のれん」の減損です。

居酒屋企業の中で「のれん」の比率が高い企業をランキング形式にしました。この記事では以下の情報が得られます。

・「のれん」の減損が経営の危機になりかねない企業
・新型コロナウイルスの影響で売上の戻りが弱い業態

自己資本の「のれん」比率143%のコロワイドが1位

甘太郎
臨時休業に踏み切る居酒屋「甘太郎」

居酒屋「甘太郎」や回転ずしの「かっぱ寿司」、焼肉「牛角」などを運営するコロワイド<7616>は、のれんが685億2900万円積み上がっています。自己資本に対する割合は143%。自己資本を超えているということは、万が一「のれん」の全額減損が起こったときに、即債務超過に陥ることを意味しています。同様に100%を超えているのが、クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>です。

【「のれん」の比率が高い企業(百万円)】

順位企業名ブランドのれんの自己資本に対する比率のれん自己資本額
1コロワイド 甘太郎など 143.0%68,529 47,919
2クリエイト・レストランツ・ホールディングス 磯丸水産など 101.2%24,485 24,188
3DDホールディングス 九州熱中屋、わらやき屋など 53.0%4,526 8,533
4ヴィア・ホールディングス 魚や一丁など 34.0%952 2,802
5チムニー はなの舞など 30.5%5,262 17,237
6ジェイグループホールディングス 芋蔵など 18.2%449 2,467
7ジー・テイスト 村さ来など 15.3%1,297 8,485
8エー・ピーカンパニー 塚田農場など 15.1%233 1,542
9梅の花 梅の花 10.8%737 6,821
10ワイズテーブルコーポレーション XEX 3.5%21 606

※直近の決算をもとに筆者作成

ここで「のれん」とはどういうものか、改めて説明します。

のれん」は企業を買収した際、対象企業の純資産を上回った差額のことを言います。貸借対照表上に無形固定資産として計上されます。例えば、純資産額が5億円の企業を10億円で買収したとき、貸借対照表の固定資産に5億円の「のれん」が計上されます。

日本の会計基準では、20年を目途に「のれん」を償却します。一方、国際財務報告基準であるIFRSでは償却するルールはありません。ランキング上位のコロワイドやクリエイト・レストランツ・ホールディングスはIFRSを採用しています。「のれん」を償却する必要がないため、平時は利益が出やすいのです。その反面、買収すればするほど「のれん」が積み上がります。

のれん」は買収した企業が計画通りの利益を出していれば、何の問題もありません。しかし、業績が急速に悪化し、計画通りに進まなくなった場合は「のれん」の減損処理をしなければなりません。固定資産の「のれん」を圧縮し、圧縮した分を損益計算書に損失として計上するのです。

損失を計上するだけならさほど問題にはなりませんが、コロワイドのように「のれん」の全額減損分を自己資本で吸収できないときは、債務超過に陥ります。企業買収によって膨らんだ「のれん」が、爆弾に例えられる理由はそこにあります。