新型コロナウイルスで飲食店の多くは営業時間の変更や休業、閉店を余儀なくされています。その影響は3月に入って急速に広がりました。外食企業が不安を隠せない中、日本KFCホールディングス<9873>は3月の既存店売上高が前年対比108.2%と驚異的な数字を叩き出しました。日本マクドナルドホールディングス<2702>が99.9%、モスフードサービス<8153>が100.9%となっており、堅調なファーストフード業界の中でもケンタッキーは突出しています。

クリスマスシーズンの特需に支えられていたケンタッキー。ピザハット事業売却後の2018年3月期の営業利益は4億7700万円でしたが、2019年3月期の営業利益は22億600万円と4.6倍の大躍進。2020年3月期は46億円(2.1倍)と予想しています。

ケンタッキーの巧みなマーケティング戦略が、コロナ禍という逆風の中でもプラスに作用した秘訣とは何でしょうか?

この記事では以下の情報が得られます。

・新型コロナウイルスによる外食企業の影響
・ケンタッキーの商品展開
・マーケティング戦略

ワンコインランチと子供と一緒に食べられる商品がヒット

ブランドイメージの大転換をじわじわと推し進めた

2020年3月の外食企業売上高は、業態で明暗が分かれました。宴会に依存している居酒屋は、壊滅的な打撃を受けています。牛丼、ハンバーガーなどのへの影響は軽微でした。カフェ、ラーメンなどは中程度。ファミリーレストランにも深い傷跡を残しました。まずは、各業態主要企業の3月の売上を見てみましょう。ケンタッキーがいかに”常識外れ”なものかがわかります。

〇主な外食産業 3月の既存店売上高

企業名業態3月の既存店月次売上高
日本KFCフライドチキン108.2%
マクドナルドハンバーガー99.9%
吉野家牛丼98.2%
王将中華料理96.5%
コメダ珈琲カフェ90.5%
日高屋ラーメン82.0%
すかいらーくファミリーレストラン76.1%
ワタミ居酒屋59.6%
梅の花和食54.8%

3月の既存店売上が100%を超えたものはモスフード(100.9%)以外ありません(4月14日現在)。

新型コロナウイルス、それに伴う非常事態宣言により、外食を取り巻く環境は一変しました。この状況下、急増した食への需要は大きく3つあると考えられます。

1.テイクアウト・デリバリー
2.子供向け料理・メニュー
3.おつまみ・ちょい飲み

巣ごもりによって、テイクアウト・デリバリー需要が増加し、休校によって子供のための食事を用意する必要が出てきました。そして居酒屋の利用が控えられたため、家で晩酌するためのおつまみ需要が増えました。ケンタッキーは上2つの需要を満たす商品、メニューを投入しており、それを上手く消費者に伝えています。そして3つ目をカバーする商品を4月から販売し、更に波に乗る予感を漂わせています。

順を追って説明します。

同社がハレの日(クリスマス)需要を脱却するために売り出した商品がワンコインランチです。2018年7月から何度か期間限定で売り出していました。それを2020年1月からレギュラーメニュー化したのです。チキン、メイプルビスケット、ポテト、ドリンクがついて500円。単品で注文すると、チキンが250円、メイプルビスケット230円、ポテト230円、ドリンクが200円で合計910円となります。コストパフォーマンス重視の消費者意識の中で、ワインコインランチがヒットしました。

ヒットの裏には巧みなマーケティング戦略も潜んでいます。1月6日から放映されたテレビCMでは、女性社員や男性営業マン、建設作業員がケンタッキーのランチをテイクアウトし、外で食べるシーンがあります。ケンタッキーのCMというと、店内や家で食べるシーンが中心でした。ワンコインランチを機に、気軽に持ち歩いて食べられるという消費者意識を植え付けています。これが成功した要因の一つだと考えられます。