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「火中の栗」JDIを拾う、いちごのキャロン社長ってどんな人?【加筆修正あり】

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「火中の栗」を拾い、再生に成功

キャロン氏は米国出身、1964年12月生まれの55歳。米シリコンバレーで育つが、父親の転勤で1歳から3年間は東京に在住した。生まれて初めて出た言葉は日本語だったという。プリンストン大学在学中の1984年の松下電器産業(現・パナソニック)の研修生として受け入れられ、1990年には慶應大学で日本語研修を受けている。

1994年に再来日し、日本開発銀行やバンカース・トラスト、英プルデンシャルグループ、モルガン・スタンレー証券株式統括本部長などを経て、2006年にいちごアセットマネジメントを創業した。同年には日本の永住権を取得している。

そのキャロン氏が会長に就任した直後の2009年2月期決算で、アセット・マネジャーズは481億7100万円もの最終赤字を計上した。キャロン氏は2009年3月13日にスイス・チューリッヒで社債権者集会を開き、2006年に同社が発行していた130億円の転換社債型新株予約権付社債(CB)の償還方法の変更に乗り出す。

社債権者の選択による繰上償還での償還額の50 %カットや満期償還日の1年延長、満期償還額の10%カット、140%コールオプション条項による期限前償還の廃止などを提案した。額面の約65%をいちごアセット・トラストが保有が保有していたこともあり、提案は成立する。

こうしてキャロン氏は、社債権者からの請求による期限前償還で2009年3月18日に最大130億円の資金が流出する可能性があったアセット・マネジャーズを経営破綻から救う。同時にCB 転換の結果、いちごアセットトラストが同社の支配株主となった。

2010年9月にアセット・マネジャーズは、いちごグループの中核企業として「いちごグループホールディングス」へ社名変更。2016年9月 には現在の「いちご」に改称した。キャロン氏にとって「火中の栗」を拾うのは得意技といえる。この手腕は250億円のCBを抱えているJDIでも大いに発揮されるだろう。

キャロン氏は投資した企業に対しては短期的な利益ではなく中長期の成長を求め、「物言う株主」とは正反対の「物聞く株主」と評価される。その一方で、2007年には委任状争奪戦(プロキシーファイト)で、東京鋼鐵が大阪製鐵<5449>の完全子会社になるとした会社側提案を否決に追い込んだ。ただ聞いているだけでなく、「言う時には言う」株主でもある。

同時にキャロン氏は日本企業のコーポレート・ガバナンス向上に取り組むNPO法人日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)の理事を経て、特任顧問に就任。経営健全化のための啓発活動に貢献するなど、財界人としての一面も持つ。

売却交渉が進む白山工場(同社ホームページより)

JDI再建の主役に躍り出たキャロン氏の「再建戦略」は、まだ明らかにされていない。いちごは前身企業の流れをくむ不動産投資を得意とし、ユニゾホールディングス<3258>や長谷工コーポレーション<1808>への投資も積極的に進めている。いちごがJDIに支援を申し入れたタイミングで、主力の白山工場(石川県白山市)を米アップルとシャープへ売却する交渉が始まったのは偶然だろうか?

文:M&A Online編集部

【お詫び】いちごアセットマネジメントからのご指摘により、記事に事実と異なる記載があることが判明しましたので、内容を一部加筆修正しております。

M&A Online編集部

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