国連SDGs(持続可能な開発目標)の1つに「持続可能な水産業」が含まれており、海洋や水産業が世界的に関心のある分野となっている。そんな中、海洋水産ベンチャーであるオーシャンアイズ(京都市左京区)は京都大学の研究成果を活用することで、1年未満で事業を軌道に乗せ資金調達にも成功した。早期に結果を出したオーシャンアイズとは、どのような企業なのか。

プロジェクトの成果を事業化

オーシャンアイズは京都大学とJAMSTEC(海洋研究開発機構)の研究者を中心に2019年5月に設立されたばかりの企業で、AI(人工知能)系技術と海洋物理系技術の融合によって持続可能な水産・海洋産業の実現を目指している。 

同社代表取締役の田中裕介氏は京都大学理学研究科を卒業後、ダイキン工業、気象工学研究所などを経て、2013年から海洋研究開発機構に在籍。現在はオーシャンアイズで海洋データ同化システムの開発に取り組んでいる。 

オーシャンアイズの事業の源流は2010年から始まった「気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)」にある。同プログラムでは海洋研究機関や各大学が協力し、アカイカを対象に温暖化に伴う漁場や水産資源量の変動の推定、その適応策に必要な情報の提供を目的としたもので、研究成果は青森県の漁業者に提供されている。 

また2019年に採択されたCREST-AI研究プロジェクト「FishTechによるサステナブル漁業モデルの創出」という漁業AIの研究プロジェクトもオーシャンアイズの事業の源流の1つだ。

年月オーシャンアイズの沿革※同社ホームページより

2019年5月

オーシャンアイズ設立

2019年7月

研究母体の一つである京都大学飯山研究室が「京都大学インキュベーションプログラム」の更新事業として採択

2019年11月

京都大学イノベーションキャピタルの運営するファンドを引受先とする第三者割当増資

2019年12月

「JAMSTEC(海洋研究開発機構)ベンチャー」の認定を受けたことを発表

2つの海洋、水産業サービス 

オーシャンアイズの現在の主なサービスとして、海況予測システム「SEAoME(しおめ)」と、漁場決定に必要な情報をリアルタイムに提供する「漁場ナビ」がある。 

「SEAoME(しおめ)」は海水温の変化に敏感な魚種を養殖する現場での水揚時期の判断、網などの養殖機器に被害をもたらす急潮や赤潮の予測などを行うサービスであり、海面養殖業者、行政機関、沿岸漁業者らが対象顧客となる。 

湾内を中心とする特定海域での水温、塩分、流速、海面高度の変化について通常5日先、最大14日先まで予測することができ、赤潮や温度変化などの海面環境の急変化を予測することも可能。 

「漁場ナビ」は主に沿岸漁業者や遠洋・沖合漁業者向けのサービス。気象衛星「ひまわり」の映像から独自のAI技術で海水温情報を復元し、漁場を決める重要な情報である海水温の最新データを24時間365日、専用タブレットに配信する。 

オーシャンアイズが提供するサービスは、現在の日本の漁業者が抱える諸問題、例えば精度の低いデータに頼らざるを得ないことや、漁業者の高齢化によるベテランの技術承継の困難さ、データを活用した漁業がいまだ浸透していないことなどを解決することが期待される。

オーシャンアイズは設立半年後の2019年11月に京都大学イノベーションキャピタルから約3000万円の資金調達に成功した。京都大学イノベーションキャピタルはオーシャンアイズのシステムがすでに漁業者に受け入れられ始めていることに着目。 

オーシャンアイズの事業が海洋・水産資源の持続的利用、国際的な資源管理、水産業・漁村の多面的機能の維持・促進に大きく貢献するとともに、海洋・水産業以外への多方面への展開が見込めるとして、投資に踏み切ったとされる。 

文:M&A Online編集部