M&Aでは「社風」も重要な判断要素に

さらに「マーケティングのためのM&Aも考えている」(山本CEO)という。これは日本が「主戦場」だった同社が「リーチできていない市場」(同)、つまりは海外企業をターゲットにしたクロスボーダーM&Aだ。マーケット理解が難しい国でローカル企業を買収し、グローバル展開を加速する。

ベトナムへ進出した日系企業でChatworkを利用する企業が多いため、現地での開発拠点や地元市場を開拓するためのマーケティング拠点の開設を検討しているという。こうした拠点を自前ではなく、現地企業の買収で整備する可能性もある。

買収に当たっては「良い企業があれば、手元資金だけでなく資金調達してM&Aをする可能性もある」(同)という。ただ「わが社の規模で、いきなり1000億円規模の大型M&Aはありえない」と、前職のリクルートホールディングス<6098>時代にIndeed(インディード)などの買収に携わってきた井上直樹取締役最高財務責任者(CFO)は話す。

ChatworkはリクルートでIndeedなどの買収に携わってきた井上氏をCFOに招聘(しょうへい)した

特に買収金額にこだわるわけではないが、最初からあまり大きな会社を買収することはないだろう。山本CEOは「国内の小さな企業からM&Aに取り組んで経験を積み、チャンスがあれば大きな企業と交渉をすることになるのではないか」と話す。まずは堅実なM&Aからスタートすることになりそうだ。

国内企業のM&Aに対する印象も変わった。「日本では自主独立にこだわる企業が多かったが、最近はバイアウトも根付いてきた。シリコンバレーでは8割の企業がバイアウトを選んでいる」(山本CEO)と、国内ベンチャー企業のM&Aに期待を寄せる。

買収対象となる企業で重視するのは、商品力や技術力、将来性だけでなく、企業のカルチャーやミッションといった「社風」の要素。「『働くをもっと楽しく、創造的に』を掲げるわが社と、結果主義・成果主義の会社とでは合わない。同様にフラットで風通しの良い組織づくりを目指しているわが社と、体育会系で上下関係が厳しい会社とも一緒にやっていくことは難しいだろう」と、山本CEOはみる。

ChatworkのM&A戦略には「ビジネスの成長」だけでなく、「仲間づくり」という要素も含まれているようだ。

文:M&A Online編集部