【検証】そごう・西武の売却 2000億円は妥当な金額なのか

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M&A Online編集部撮影(2022年1月)

PSR(株価売上高倍率)による比較

通常、M&A取引は将来予想に基づくEV/EBITDA倍率で価格を議論することが一般的ですが、セブン&アイは西武・そごうのEBITDAの事業計画を公表していないため、将来予想に基づくEV/EBITDA倍率で価格を議論することは今回は困難です。

また、直近実績ベースでも、上記の通り、減価償却費が開示されておらずEBITDAを計算できないこと、有利子負債残高が開示されておらず事業価値(EV)が計算できないことから、実績ベースでもやはり困難です。

次善の策としては、PERを比較することが考えられますが、上記の通り、そごう・西武は単独の事業計画を開示しておらず、直近実績赤字であるため実績ベースのPERも算出不能です。

こうなると、最後の手段として、PSR(株価売上高倍率)を使用せざるを得ません。

PSRは理論的根拠が弱く評判の悪い株価指標ですが、利益率に大きな差がなく、マーケットが成熟しており、もっぱら売上高の多寡が業績の差異を説明しうるようなケースでは簡便法的に一定の有用性を発揮することもあり、特に百貨店を含む小売業の企業間比較ではある程度の有用性が認められていますから、今回は利用可能とみてよいでしょう。

まず、報道されている「2000億円」を株式価値として、21/2期の売上高でPSRを算出すると、以下の通り0.5倍となります。

次に、百貨店の主要4銘柄の2022/1/31(報道前日)の終値を基準に、そごう・西武の直近情報と時期をそろえた2021/2期・2021/3期の売上高に対するPSRを算出すると、以下の通りです。

百貨店主要4銘柄のPSR

これを見る限り、4社のPSRは0.1倍から0.5倍までかなり開きがあるものの、最も高い近鉄百貨店と同程度のPSRであるため、やはりかなり強気の価格と考えられます。

報道では、店舗立地から不動産価値に着目して十分に価値があると判断し応札するファンドがいくつかあるようだとの観測もなされていますが、本当にそれだけの価値があるのかどうか、各店舗の不動産登記情報を取得して近隣公示地価や借地権割合などから不動産価値を推計してみるのも面白いかもしれません。

文:巽 震二(証券アナリスト/フリーランス・マーケットアナリスト)

※本記事に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも執筆者個人の意見として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。

巽 震二 (たつみ・しんじ)

フリーランスマーケットアナリスト。
証券アナリストとして大手証券会社調査部勤務後、専業個人投資家に転身。
アベノミクスの波に乗って2015年、目標資産残高を達成し、トレーディングもめでたく卒業。 現在はフリーランスマーケットアナリストとして活動中。本連載はペンネームで寄稿している。


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