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残余利益法その2|企業価値のアプローチと評価手法(8)

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前回に引き続き、インカムアプローチの収益還元法に属する「残余利益法」をみていきたい。

残余利益法では、調整現在価値法と同じように「事業価値を計算し株主価値を出す」方法と、株主価値を「直接計算する」方法がある。今回は、株主価値を直接計算する方法について解説する。

残余利益法ー株主価値を直接計算する場合

残余利益とは、当期純利益から株主が期待する収益分を引いた利益でである。残余利益法において、株主価値を直接計算する場合には、株主資本簿価と株主に帰属する残余利益の現在価値合計を計算する。

また、この方法におけるターミナル・バリュー(終価)は、事業価値を計算する方法と同様、ある期以降の残余利益が定額であると仮定したり、競争圧力によって残余利益はゼロになると仮定するなど、多様な仮定の下で推定される。残余利益法は、フリー・キャッシュ・フロー法等と比較して、評価結果に対してターミナル・バリューが相対的に少額になるため、ターミナル・バリューの予測における不確実性の影響が小さいといわれている。

株主価値を直接計算する方法では、計算過程において「株主資本コスト」を使用する。例えば、事業価値から株主価値を計算する際に使用する「加重平均資本コスト」を求めることが難しい場合等には、株主価値を直接計算する方法を採用する。

実際に数値例を用いて、「株主価値を直接に計算する場合の残余利益法の計算方法」をみていきたいと思う。

残余利益法の計算例:株主価値を直接計算する場合
「A社の株主価値はいくらか?」

-前提条件- 
評価対象会社: A社
評価基準日 : 20×1年期末
A社の加重平均資本コスト:10%

A社の貸借対照表 (評価時点と予測)

(単位:百万円) 評価時点 1年後 2年後 3年後
20×1年 20×2年 20×3年 20×4年
流動資産 2,000 2,400 2,640 2,640
固定資産 10,000 12,000 13,200 13,200
合計 12,000 14,400 15,840 15,840
流動負債 1,000 1,200 1,320 1,320
固定負債 6,000 7,200 7,920 7,920
純資産 5,000 6,000 6,600 6,600
合計 12,000 14,400 15,840 15,840
総営業資産(=固定資産+正味運転資本) 11,000 13,200 14,520 14,520
正味運転資本(=流動資産ー流動負債) 1,000 1,200 1,320 1,320

・A社の損益情報等の予測

(単位:百万円) 1年後 2年後 3年後
  20×2年 20×3年 20×4年
営業利益 3,300 3,960 4,356
支払利息 300 360 396
税引前利益 3,000 3,600 3,960
法人税等 1,200 1,440 1,584
税引後純利益 1,800 2,160 2,376
       
減価償却費 500 600 660
設備投資 2,500 1,800 660
運転資本増加額 200 120 0
純借入額 1,200 720 0

・A社の資産はすべて営業資産であり、普通株式及び有利子負債(利率5%)によって資金調達している。
・また、固定負債はすべて有利子負債であり、その簿価は時価と等しいものとする。
・なお、流動負債は無利子負債である。

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