企業価値の算定方法としては、将来キャッシュフローを現在価値に割り引くDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)が有名です。ただし、企業外部の者にとっては将来キャッシュフローや割引率に関する情報は入手しにくいという面もあります。

これに対して、マルチプル法は類似業種の上場企業における財務指標と株価(時価総額)との関係から対象企業の株主価値などを算定する方法です。そのため、比較的入手しやすい情報で価値評価が行えるという利点があります。今回は、このマルチプル法による評価を具体的な数値を用いながら体感してみましょう。

EBIで鯛を釣る評価方法

マルチプル法でよく使用される財務指標としてはEBITDAがあります。一般的に「イービッ(ト)・ダ」や「イービット・ディーエー」と読みますが、実務家の中には少しユーモラスに「エビ」と呼ぶ人もいます。

EBITDAは「Earnings Before Interest, Tax, Depreciation and Amotization」の略で、支払利子・税金・減価償却費を控除する前の利益という意味になります。つまり、決算書の最終利益に支払利子・税金・減価償却費を足し戻してあげるとEBITDAになります。

マルチプル法の仕組みは、類似業種の上場企業における「時価総額÷EBITDA」の比率を求め、これを対象企業のEBITDAに乗じるというものです。なお、時価総額は企業の1株当たり株価に発行済株式数を乗じることによって算定できます。

各社のEBITDAを計算してみる

それでは、下記の表からEBITDAを算出してみましょう。算出の仕方は、最終の「当期利益」に法人税等と支払利息と減価償却費を足しても良いですし、「税引き前利益」に支払利息と減価償却費を足しても同じです。

類似A社のEBITDAは13,000(=当期利益5,500+法人税等1,500+支払利息1,000+減価償却費5,000)となります。

同様に、類似B社のEBITDAは7,800(=当期利益2,000+法人税等1,000+支払利息800+減価償却費4,000)、類似C社のEBITDAは5,500(=当期利益1,400+法人税等600+支払利息500+減価償却費3,000)となります。

また、対象企業X社のEBITDAも算出しておくと、230(=当期利益40+法人税等20+支払利息70+減価償却費100)となります。