【M&A戦略】海外勢の買収劇が再編を促す

新日鐵住金の主なM&A
年月     内容
2004年4月 新日本製鉄グループは、グループ全体での収益力と競争力を一層強化・加速していく必要があるとの認識の下、新日本製鉄が、日鉄鋼板、日鉄鋼管及び日鐵建材工業各々を完全子会社とすることを決議し、株式交換契約書を締結した。
2004年5月 新日本製鉄子会社の日鐵ボルテン株式会社および中山製鋼所子会社の中山三星建材は、両社のボルト事業を統合することについて基本合意に達した。
2004年12月 新日本製鉄と中山製鋼は、双方の棒線事業の競争力強化を目的に、共同出資(新日本製鉄60%、中山製鋼 40%)の新会社を設立。新会社は、中山製鋼から棒線圧延設備を購入し、新日本製鉄および中山製鋼各々から圧延業務を受託する、製造会社となる。
2004年12月 新日本製鉄は中山製鋼株式を中山製鋼の関連会社から取得し、出資比率を現行の 1.3%から 5%とした。
2005年9月 新日本製鉄と、日鐵物流及び製鐵運輸は、株式交換を行い、新日本製鐵が、日鐵物流、製鐵運輸各々を完全子会社とすることを決議し、株式交換契約を締結した。
2005年9月 新日本製鉄と住友金属工業は、来年4月より、新日鉄100%子会社の日鉄ハイパーメタルと住友金属100%子会社のカントクの圧延用鋳造ロールの製造・販売事業を統合し、共同事業化する基本方針に合意した。
2005年12月 新日本製鉄、住友金属工業、神戸製鋼所は、連携施策をより一層、円滑かつ着実に検討・実行していくことを目的とした相互の株式追加取得を完了した。
2006年5月 新日本製鉄22%出資の関連会社である鈴木金属工業と、住友電気工業100%出資の子会社である住友電工スチールワイヤー(SSW)は、両社のステンレス鋼線事業を統合し、新会社を設立することについて基本合意した。
2006年5月 新日本製鉄と住友金属工業は両社の連携策の一環として、両社グループにおける建材薄板事業及び道路・土木商品関連事業の統合のための基本契約書を締結した。
2006年11月 新日本製鉄は、南米屈指の鉄鋼会社であるブラジルのウジミナス社 の協定株主であるウジミナス社従業員年金基金及びヨハネス・ベルナルドゥス・アレマー氏よりウジミナス社議決権株式1,917,211 株(議決権株式内比率 1.7%)を買付ると共に、ウジミナス社主要株主と期間 15年間の株主間協定を締結した。
2007年3月 新日本製鉄及び新日本製鉄が53.5%出資している北海鋼機と、中山製鋼所及び中山製鋼所が40.3%出資している中山三星建材は、北海鋼機の棒線事業と中山三星建材苫小牧工場の棒線事業を統合することに向け基本合意した。
2007年5月 新日本製鉄と同社子会社である北海鋼機は、建材薄板分野(メッキ・カラー鋼板)における新日鐵グループ競争力強化の一環として、新日本製鐵による北海鋼機の完全子会社化を株式交換により行うことで合意。
2007年5月 新日本製鉄と日鐵ドラムは、株式交換により日鐵ドラムを新日本製鐵の完全子会社とすることを決議し、株式交換契約を締結。
2007年6月 新日本製鉄と合同製鐵は、双方の競争力強化のための一層の相互提携を実施していくことに合意。
2007年9月 新日本製鉄の100%出資子会社である新日鉄エンジニアリングと、三菱重工業が100%出資子会社である三菱重工橋梁エンジニアリングは、橋梁分野で事業提携することに合意した。
2007年9月 新日本製鉄は、大同特殊鋼の保有する王子製鉄の発行済株式 35.6%を取得することについて大同特殊鋼と基本合意した。これにより、新日鉄の王子製鉄への株式保有比率はこれまでの7.2%から42.8%となり、王子製鉄は新日鉄の持分法適用会社となる。
2007年12月 新日本製鉄、住友金属工業、及び神戸製鋼所は、更なる連携深化・拡大施策、及び追加の相互株式取得について合意した。
2008年1月 新日本製鉄は、王子製鉄の発行済株式 8.7%を追加取得し、今回取得分と合わせた保有比率は 51.5%となり、王子製鉄は新日鉄の連結子会社となった。
2008年2月 新日本製鉄及び住友商事は三井鉱山のB種優先株式すべてを両社がそれぞれ1/2ずつ取得することにつき、同株式保有者である三井住友銀行と合意に至った。
2008年9月 新日本製鉄とトピー工業は、双方の競争力強化と企業価値向上のために、相互提携を一層強化していくことに合意した。
2011年9月 新日本製鉄と住友金属工業は、経営統合に向けた検討を開始することについて合意した。
2012年4月 新日本製鉄と住友金属工業は、株式交換により新日本製鉄を吸収合併存続会社、住友金属工業を吸収合併消滅会社とする株式交換契約及び合併契約を締結した。尚、経営統合の実施は2012年10月1日をもって行われる予定。
2012年6月 新日鉄エンジニアリングの100%子会社である日鉄パイプラインと住友金属工業の100%子会社である住友金属パイプエンジは、2012年10月1日付けで経営統合することで合意しました。
2013年4月 新日鐵住金と住友鋼管は、新日鐵住金を株式交換完全親会社、住友鋼管を株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを取締役会で決議し、両社の間で株式交換契約を締結した。
2015年4月 新日鐵住金と日鉄住金テックスエンジは、新日鐵住金を株式交換完全親会社、日鉄住金テックスエンジを株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを取締役会で決定し、本株式交換に関する株式交換契約を両社間で締結することを決議した。
2015年4月 新日鐵住金と鈴木金属工業は、新日鐵住金を株式交換完全親会社、鈴木金属工業を株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを取締役会で決定し、本株式交換に関する株式交換契約を両社間で締結することを決議した。
2016年3月 新日鐵住金及び日新製鋼は、2017年3月を目途に新日鐵住金が日新製鋼を子会社化すること及びこれを前提に新日鐵住金が日新製鋼に鋼片を継続的に供給することについて検討を開始する旨の覚書を取り交わし、以降、検討を進めてきた。今回、両社は、本子会社化の具体的な方法、出資の条件等について協議が整ったことから子会社化等に関する契約を締結した。
2016年5月 新日鐵住金は、資産圧縮等による財務体質改善に取組むため、2006年10月に追加取得した POSCO株式 1,500,000株(当社が保有する POSCO株式 4,394,712 株のうち 34.1%相当)を売却することとした。売却時期は、市場の動向等を見極めたうえで判断し、上記売却後の当社の POSCO への出資比率は 3.32%となる見込み。
2017年2月 新日鐵住金は、日新製鋼の子会社化を目的に同社株の公開買付けを開始

 2006年、ルクセンブルクのアルセロールとオランダのミッタル・スチールの経営統合によって世界最大の鉄鋼メーカーが誕生した。同社は年間粗鋼生産量で世界シェアの約10%を占め、当時の新日本製鉄の3倍以上の規模を誇った。この海外鉄鋼メーカーの買収劇により、優れた技術を持つ日本の鉄鋼大手も敵対的買収の標的になるのではないかと懸念が広がった。

 これまで鉄鋼業界では、各国で政府が殖産興業策としてリーダーとなる企業を育成し、国・地域ごとにすみ分ける構図が出来上がっていた。しかし、これを一変させたのが今回アルセロールに敵対的買収を仕掛けたミッタル・スチールだった。創業者のラクシュミ・ミッタル氏はインドの行商人の一家の出身で、資金力にモノをいわせて買収を繰り返しトップに上り詰めた人物だった。そういったやり方を懸念し、日本の鉄鋼業界ではミッタルが次に狙うのは日本・アジアの企業ではないかと戦々恐々とした。これを受け、新日本製鉄は2006年以降、他社との提携関係を深め、特に、後に統合する住友金属工業や神戸製鋼所とは複数回に渡り株式持ち合い等提携関係を拡大させている。

 リーマンショックを経て、2012年になると新日本製鉄と住友金属工業は経営統合を行った。アルセロール・ミッタルからの買収防衛が今回の統合の心理的な背景になったことは間違いないが、リーマンショックを経た中で、それは本質的な理由ではなくなり、世界景気の減速や円高の長期化、顧客の海外鋼材シフトなど経営環境が厳しさを増した中での成長戦略を目的としたものだった。

 新日本製鉄と住友金属工業は共に異なる分野を得意としており、お互いの得意分野を伸ばしつつコスト削減や資産圧縮を図るということが統合した大きな目的である。例えば、技術的には新日本製鉄は特に自動車用鋼板で世界最高水準の技術力を持ち、住友金属工業はシームレスパイプや交通産機品(鉄道車輪、クラクシャフト等)で世界有数の技術を有しており、両社が技術優位性を発揮できる点は相互補完の関係にある。更に、今後新興国においては、自動車生産の拡大や鉄道インフラの敷設等で需要の伸びが見込まれ、こうした分野での技術優位性が、販売数量の増加につながり、規模の拡大にも貢献すると期待されている。

 2012年の新日本製鉄と住友金属工業の統合は、アルセロール・ミッタルからの買収防衛ということがきっかけとなった統合ではあるものの、結果として技術的にも相互補完関係にあり、中国をはじめとする新興国の鉄鋼メーカーが台頭する中で、生き残りを掛けた必然的な統合だったとも考えられる。再編が現在も続く鉄鋼業界の中で、技術的にもコスト削減という面でも成功したM&Aの一つと言えるのではないかと思われる。

粗鋼生産ランキング(2005年)
順位 社名 生産量
(万トン)
1 ミッタル・スチール(オランダ) 4,989
2 アルセロール(ルクセンブルク) 4,665
3 新日本製鉄(日本) 3,291
4 ポスコ(韓国) 3,142
5 JFEスチール(日本) 2,957
6 宝鋼集団(中国) 2,273
7 USスチール(米国) 1,926
8 ニューコア(米国) 1,845
9 コーラス(英国) 1,818
10 唐山鋼鉄(中国) 1,608

(ロイター通信「世界の鉄鋼メーカー別の粗鋼生産量」(http://jp.reuters.com/article/idJPnTK3113401200703...),

粗鋼生産ランキング(2015年)
順位 社名 生産量
(万トン)
1 アルセロール・ミッタル(ルクセンブルク) 9809
2 新日鐵住金(日本) 4930
3 河北鋼鉄集団(河鋼集団)(中国) 4709
4 宝鋼集団(中国) 4335
5 ポスコ(韓国) 4143
6 沙鋼集団(中国) 3533
7 鞍山鋼鉄集団(中国) 3435
8 武漢鋼鉄集団(中国) 3305
9 JFEホールディングス(日本) 3141
10 首鋼集団(中国) 3078

SBクリエイティブ(株)ビジネス+IT「鉄鋼業界の世界ランキング2016:再編が加速、新日鉄やJFEは欧米や中国に勝てるのか」(http://www.sbbit.jp/article/cont1/32197)を基に作成)