塩野義製薬<4507>は、アバター(仮想空間で自身の分身として表示されるキャラクター)の活用を目指すAVITA(東京都渋谷区)と資本業務提携した。
同社はAVITAと共同で、医療・福祉分野でアバターを活用した対話サービスや未病段階からの各種健康相談などの新たなヘルスケアサービスの開発を目指す。
AVITAの代表取締役CEO(最高経営責任者)は、20年以上に渡りアンドロイド(人間に酷似したロボット)やアバターの研究開発に携わってきたロボット学者の石黒浩大阪大学大学院基礎工学研究科教授が務める。AVITAって一体どんな会社なのか。
AVITA は石黒氏が中心となって2021年6月1日に設立したばかりの企業で、これまでの研究成果や今後生まれる研究成果を「社会に実装するための会社」だという。
AVITAによると、人は複数の自分(職場や家庭など)で活動しており「アバターを用いれば、その自分を実世界でさらに多様に拡張し、状況や目的に応じたいろいろな自分で自由に活動することがでる」と言い、この技術を用いて人々を解放する新たな世界をつくるとしている。
塩野義は中期経営計画で、創薬型の製薬企業からヘルスケアサービスを提供する企業への変革を打ち出しており、今回の資本参加はこの方針に沿ったもので、アバターを活用して顧客のニーズに応じたさまざまなヘルスケアサービスの提供を目指す。
一方、石黒氏は二足歩行ロボットやアンドロイドなどの研究で知られる。現在、内閣府の挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する「ムーンショット型研究開発制度」のプロジェクトマネージャーや、2025年に大阪で開かれる大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーなどを務めている。
塩野義は出資比率などの詳細は明らかにしていないが、同社のほかに大阪ガス<9532>、サイバーエージェント<4751>、凸版印刷<7911>、フジキン(大阪市)の5社が合わせて5億2000億円を出資した。
大阪ガス、サイバーエージェント、凸版印刷は、アバター技術を活用して、顧客に対するコミュニケーションを充実させ、フジキンはロボットやアバターが利用できるアクチュエーター(駆動装置)の開発などを進める。
文:M&A Online編集部
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