コロナで苦しむ外食、宿泊、旅行会社を支援する「日本政策投資銀行」とは?

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本店がある大手町フィナンシャルシティ サウスタワー

新型コロナウイルス感染拡大、旅行者急減による資金繰りの悪化に苦慮するJTB(東京都品川区)が、日本政策投資銀行(東京都千代田区)がLP出資(ファンドへの出資を通じた投資活動)する「DBJ飲食・宿泊支援ファンド」や主要銀行に対して第三者割当増資を実施し、優先株による300億円の資金調達を行います。

JTBは2021年3月期に1,051億5,900万円の純損失(前年同期は16億4,900万円の純利益)を計上し、自己資本比率は2020年3月末の24.3%から6.9%まで急降下していました。「DBJ飲食・宿泊支援ファンド」は新型コロナウイルス感染拡大で業績が悪化した外食、宿泊、旅行業界の救世主とも呼べる存在です。ファンドの資金の出し手である日本政策投資銀行とは、どのような会社なのでしょうか?

この記事では以下の情報が得られます。

・日本政策投資銀行の概要と業績
・飲食・宿泊支援ファンドの投資先と詳細

完全民営化に向けて歩みを進める

コロナで業績が悪化したHUBは日本政策投資銀行から資本性劣後ローンで20億円を調達

日本政策投資銀行は、1947年1月に戦後の日本経済立て直しを目的として設立された「復興金融金庫」と、北海道の産業開発促進を目指して1956年6月に設立された「北海道開発公庫」を源流とする日本の金融機関です。1999年6月に日本政策投資銀行法が施行され、その年の10月に日本政策投資銀行が設立されました。2007年6月に株式会社日本政策投資銀行法が施行されて2008年10月に特殊法人だった日本政策投資銀行が解散、株式会社日本政策投資銀行が誕生しました。現在、100%の株式を保有しているのは財務省です。

2021年3月末時点で総資産額は20兆円を超えています。上場企業で総資産20兆円規模の会社は、ホンダ<7267>(21兆円)や三菱商事<8058>(18兆円)があります。

日本政策投資銀行は出資と融資を一体的に行い、ファイナンスの様々な手法を用いることで、事業資金を必要とする組織に資金を供給することを目的としています。民営化した背景には、官から民に移すことで、資金の流れの透明性や公平性を確保したことがあります。当初は政府出資のすべてを処分して完全民営化するという青写真を描いており、株式の売却益として1.9兆円を見込んでいました。しかし、2008年に世界金融危機、2011年に東日本大震災が起こり、混乱を避けるために日本政府が関与を維持する方針が固められました。

事業は融資、投資、コンサルティングの3つが柱となっています。中長期融資やストラクチャードファイナンスの他、劣後融資、リスクマネーの提供、スタートアップを中心としたベンチャー投資なども行っています。また、ストラクチャードファイナンスのアレンジャーやM&Aアドバイザーなどとしても活躍しています。

日本政策投資銀行は地方の活性化や災害時のセーフティネット、革新的な技術を開発する会社の支援など、多目的な融資や出資をしている点に特徴があります。また、利益よりも支援の側面が強く、社会的な貢献度の高い組織と言えます。その一方で政府から赤字補填は受けない運営体制をとっているため、プロジェクトへの出資や融資はシビアに行われます。

生え抜き社員が社長へと昇進

2021年3月末時点での従業員数は1,781人。代表取締役会長は木下康司氏です。木下氏は1979年東京大学法学部を卒業して大蔵省(現:財務省)に入省。主計局総務課に配属されました。同期には日本政策金融公庫代表取締役総裁の田中一穂氏、内閣官房長官の加藤勝信氏がいます。

木下氏は1999年に主計局主計官に就任し、運輸省と郵政省を担当しました。2004年に財務省大臣官房総合政策課長に就任。2011年には為替や国際金融市場の安定化を図る国際局長に就きました。2012年に主計局長、2013年に事務次官へと昇進し、2014年に退官。財務省の顧問となります。2015年に日本政策投資銀行代表取締役副社長、2018年に代表取締役会長となりました。

代表取締役社長は1981年に日本開発銀行に入行した渡辺一氏。生え抜き社員が社長へと上り詰めたケースとなりました。財務省が全株式を保有する日本政策投資銀行の役員は、財務省の天下り先として知られていました。その古い常識が崩れ、民間企業らしい体制がとられるようになっています。

2021年3月期の経常収益は前期比6.8%減の2,694億6,200万円、純利益は同10.3%減の452億4,600万円となりました。純利益は2020年3月期を境に急速に落ち込んでおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものと考えられます。

【日本政策投資銀行の業績推移】単位:百万円

2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期
経常収益 285,476 291,792 301,204 289,144 269,462
増減 - 102.2% 103.2% 96.0% 93.2%
経常利益 122,531 127,156 128,133 78,992 73,096
増減 - 103.8% 100.8% 61.6% 92.5%
純利益 87,639 91,938 91,936 50,456 45,246
増減 - 104.9% 100.0% 54.9% 89.7%

※日本政策投資銀行有価証券報告書」より筆者作成

有価証券報告書によると、2025年度の目標として2,000億円の粗利益、850億円の純利益を掲げています。中長期経営計画の主要な施策として「DBJ GRIT戦略」を推進しています。これはカーボンニュートラルの実現に向けた産業の活性化を目指すものです。

コロナ支援のファンド1号案件はワタミ

「DBJ 飲食・宿泊支援ファンド」のスキーム図(画像は「飲食・宿泊支援ファンドについて」より)

日本政策投資銀行は2021年3月に500億円規模となる「DBJ 飲食・宿泊支援ファンド」を立ち上げました。日本政策投資銀行がLP出資をし、日本政策金融公庫が損害担保付ステップ・ローンを供与、DBJ地域投資がGP(ファンドの運営に責任を負う組合員)としてファンドの運営管理を行います。

このファンドの第1号案件となったのが、居酒屋を運営するワタミ<7522>です。ワタミは2021年3月期に115億8,600万円の純損失を計上し、34.1%だった自己資本比率がわずか1年で7.0%まで低下していました。ファンドからのメザニンファイナンスで120億円を調達し、自己資本に厚みをつけると同時に、居酒屋から新常態に強い焼肉店への転換を進めています。

結婚式場とビジネスホテルのコロナダブルパンチとなった藤田観光<9722>も、このファンドから優先株の発行によって150億円を調達しました。

【「DBJ 飲食・宿泊支援ファンド」の主な出資先】

企業 出資額
JTB 300億円
藤田観光 150億円
ワタミ 120億円
梅の花 20億円
テンアライド 15億円
京都ホテル 10億円
ユナイテッド&コレクティブ 5億円

※発表をもとに筆者作成

文:麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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