IPO(新規株式公開)戦線に「異変」が起きている。今年、東京証券取引所に新規上場した企業のうち、上場前の資本金が5000万円以下のところが25%と4社に1社を占める。2018年の19%、2017年の15%と比べ、急上昇している。これは何を意味するのか。
資本金が5000万円以下の場合、VC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けているケースはわずか。業種や業歴によって事情が異なるとはいえ、VC資金の活用が必ずしもIPOの“パスポート”となっていない様子がうかがえる。
「1億円以下」が半数を超えるまでに
1~9月に東証に新規上場した企業は47社(テクニカル上場、TOKYO PRO Market上場や他市場からの上場は除く)。M&A Online編集部が各社の上場前の資本金を調べたところ、5000万円以下が12社だった。内訳は5000万円が1社、4000万台が1社、3000万円台以下が10社で、過小資本といえる1000万円クラスは3社含まれる。
上場前の資本金が5000万円以下の企業はここ数年、比率を高めている。2015年は新規上場89社中、12社(14%)だったが、2018年には同89社中、17社(19%)に増えた。
こうした流れが加速し、今年は1~9月で全47社中、12社と25%強を占める。9月末の第3四半期段階の新規上場数は前年同期の60社より13社少ないが、最終的に年間の上場企業が例年並みの80~90社と仮定すれば、20社を超える計算だ。10月以降に上場する企業でも直前の資本金が5000万円以下のところがすでに2社ある。
上場前の資本金1億円以下でみると、傾向はより鮮明だ。今年は9月末で27社と半数を超え、その比率は57%。2018年の46%(41社)、2017年35%(30社)から急伸している。
意外に少ない、VCからの資金調達
では、VCから資金調達の状況はどうか。今年上場した企業を対象に、上場目論見書の「株主の状況」をあたったところ、資本金5000万円以下の企業で、明確にVCの存在が認められたのは2月にマザーズに上場した識学だけ。
資本金が5000万円以下と小規模である場合、一般にVCなど外部資本を受け入れていないことが考えられるが、これが裏付けられた格好だ。
識学はK&Pパートナーズ(東京都千代田区)が組成するファンドから出資を得ていた。同社は2015年に設立し、4年でスピード上場した。ほかの会社では投資事業を兼営する取引先の事業会社から出資を受け入れていたケースが数例見られた。
また、1億円以下までに範囲を広げると、27社中、別に7社ほどがVCを活用していた。それでも4社に1社にとどまる。
◎東証上場前の資本金規模:1億円以下と5000万円以下の企業数
年 | 1億円以下 | 5000万円以下 | 上場社数 |
2019 | 27社(57%) | 12社(25%) | 47社 |
2018 | 41社(46%) | 17社(19%) | 89社 |
2017 | 30社(35%) | 13社(15%) | 86社 |
2016 | 36社(44%) | 12社(15%) | 81社 |
2015 | 32社(35%) | 12社(14%) | 89社 |
※2019年は1月~9月。集計は東証の新規上場(テクニカル上場、その他市場からの上場は除く)