経産省「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書」を公表

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経済産業省は企業の成長投資やオープンイノベーション(外部の技術や知識などを活用した技術革新)の促進を狙いとする「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書」を取りまとめ公表した。

大企業がスタートアップ(革新的な技術やアイデアを持つ非上場企業)を買収する際の、バリュエーション(企業価値)評価に対する考え方や、投資家にM&Aの有用性を理解してもらうためのIR(投資家に財務などの情報を提供する活動)のあり方についての指針となるものだ。

報告書では大企業が成長戦略にスタートアップのM&Aを組み込むことで、大企業の中長期的な価値向上やスタートアップの安定的な成長につながるとしている。

阻害要因はバリュエーション差異と減損懸念

米国の主要企業では、M&Aを積極的に行い、企業価値の向上につなげていることが読み取れる(同報告書より)

報告書ではまず、スタートアップがイノベーション(技術革新)の担い手であり、新しいビジネスがスタートアップを中心に次々に創造されることが期待されているとする一方、大企業については、多くの企業が成長戦略にオープンイノベーションを組み込めていないと分析。

そのうえで、大企業によるスタートアップのM&Aが活発でない要因としてヒアリングで意見の多かった「買収企業とスタートアップの間でバリュエーションが合意に至らない」「のれん(買収価格と子会社化する企業の純資産額との差額)の減損が発生すること、及び投資家からのネガティブな評価を懸念する」の二つに絞って、考え方やあり方を示した。

アーンアウトや株式対価M&Aの検討を

バリュエーションの考え方では、M&Aの阻害要因の一つである「スタートアップと買収企業との間で生じるバリュエーション評価の相違」が、主に事業計画に対する評価の差によって生じることが多いとし、非財務情報(財務諸表などで開示される情報以外の技術やユーザー、提携先などに関する情報)や、シナジー効果について両者で認識をすり合わせることが重要とした。

さらにバリュエーション評価の相違を解消するために「アーンアウト条項」や「株式対価M&A」を検討することに言及している。

アーンアウトは買収対価の一部を一定の目標達成と連動させて追加で支払うもので、買収企業にとっては初期の支払いを軽減でき、投資リスクを回避することができる。

株式対価M&Aは現金の代わりに自社株を対価とするもので、買収企業は資金調達が必要なく、スタートアップにとっては金銭的メリットが大きくなる可能性がある。

このため、いずれもバリュエーション評価の相違を解消する手段の一つになり得る、としている。

具体的な取り組み事例を紹介

IRのあり方では、のれんの減損リスクに目が向かいがちな投資家に対し、企業価値を高める投資としてM&Aを位置付けていることを積極的にIRすることが現状の打破につながると判断。

具体的な事例として、富士フイルムやリコー、資生堂などによる投資戦略に係るIR事例6件を、マネーフォワード、エムスリーなどによるM&A実行時に係るIR事例4件を、さらにテクノプロ・ホールディングス、リクルートホールディングスなどによるM&A後のモニタリングに係るIR事例4件を紹介している。

文:M&A Online編集部

関連リンク:経済産業省 大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書

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