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【会計処理】クラウドファンディングによる資金調達

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皆様、こんにちは。ビズサプリの庄村です。今回は、昨今、新聞やネットなどでよく目にするクラウドファンディングに焦点を当て、クラウドファンディングに関する会計処理や税務処理のポイントを紹介していきます。これからクラウドファンディングでの資金調達を検討している法人や個人の方はぜひ参考にしてみてください。

1.クラウドファンファンディングとは

インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達するクラウドファンディング(以下、「CF」という。)が急拡大しています。CFは、個人やベンチャー企業だけでなく、地方自治体や上場会社でも活用され、新たな資金調達の手段となっています。

具体的にはCF主催者はインターネット上の「クラウドファンディング」というサイトに自社の商品やサービス内容を掲載し、商品やサービスのアピールを行います。そして、インターネットを見た不特定多数の方がその商品やサービスを理解したうえで小口の資金を支援するという仕組みです。

CF主催者にとっては、製品開発やイベントの開催にかかる多額の資金をCFにより不特定多数の人から資金提供を呼びかけ、一定額の資金が集まってプロジェクトが実行されるので、資金調達のリスクが低減されます。また、自社の商品やサービスを一般大衆にアピールできるというメリットがあります。

CF支援者にとっては、小口の出資ができ、投資型の場合には将来のリターンが期待できるとともに、社会貢献活動へ参画できるというメリットがあります。

CFにはCF支援者に対するリターンの形態により寄付型、売買型、投資型に分類され、次以降で分類ごとの会計処理や税務上のポイントを言及します。

2.寄付型CFの会計処理及び税務上のポイント

寄付型は、CF支援者にリターンがないタイプのCFです。被災した自治体や発展途上国の支援をしているNPO法人など公益的な活動を行う団体に対する資金提供であり、社会貢献の高いプロジェクトで利用されるCFです。募金のような感覚で行われます。

寄付型CFの会計処理はCF主催者及びCF支援者が個人か法人かで会計処理や税務上のポイントが異なります。

1.個人⇒個人の場合
CF主催者である個人は資金の贈与を受けたこととなり、調達した資金に個 人の贈与税がかかってきます。
寄付先である個人のCF主催者が寄付金控除の対象先とならないため、確定申告での寄付金控除にもならないのでCF支援者である個人は年末調整や確定申告も必要ありません。

2.個人⇒法人の場合
資金調達者であるCF主催者(法人)は贈与を受けたこととみなされ、受贈益が発生しその分の法人税が課されます。
また、個人のCF支援者は、所得税法上の特定寄付金に該当すれば寄付金控除で所得が低くなりその分所得税が軽減されます。

3.法人⇒個人
資金調達者であるCF主催者(個人)は一時所得扱いとなり、その分の所得税が課せられます。
法人たるCF支援者は寄付金として費用(損金)計上し、その一定限度額分の法人税が軽減されます。

4.法人⇒法人
資金調達者であるCF主催者(法人)は?と同様贈与を受けたこととみなされ、受贈益が発生しその分の法人税が課されます。
法人たるCF支援者は?と同様に寄付金として費用(損金)計上し、その一定限度額分の法人税が軽減されます。

なお、寄付型の場合には、消費税等は非課税の取引となります。

3.売買型CFの会計処理及び税務上のポイント

売買型は、CF支援者に金銭以外のリターンがあるタイプのCFです。CF支援者が商品やサービスの開発などに必要な資金を提供し、CF主催者は出来上がった自社の商品やサービスをリターンとして提供するもので、最も利用されているCFです。

売買型のCFは通常の売買と同様の処理となります。

CF主催者は調達資金の受取時点で「前受金」で計上し、商品またはサービスを提供して時点で「前受金」を「売上高」に振り替えます。
一方、CF支援者の処理ですが、CF支援者が個人の場合には、税金の支払や確定申告の必要もありません。

CF支援者が個人事業主や法人の場合には、商品やサービスが事業に必要なものであれば資金の提供時点で「前渡金」で計上し、商品またはサービスの受領や享受があった時点で「前渡金」を経費として振り替えます。

なお、売買型の場合には、消費税等に関しては課税取引となります。

4.投資型CFの会計処理及び税務上のポイント

投資型は、CF支援者に金銭的なリターンがあるタイプのCFです。さらに投資型は貸付型、ファンド型、株式型と3つの種類に分類できます。
投資型のCFは貸金業者登録や金融商品取引法の規制があるため、その利用は少ないようです。

貸付型の会計処理は、通常の金銭消費貸借の処理と同様となります。

CF主催者は金銭の借入にあたるため「借入金」計上するとともに、CF支援者に金利に見合った借入利息を支払います。一方、CF支援者は資金提供により「貸付金」計上するとともに、CF主催者から利息を受け取ります。

ファンド型と株式型の会計処理は、通常の新株発行と同様の処理となります。

CF主催者は資金調達により「資本金(資本準備金)」を計上し、決算が好業績であれば、CF支援者に配当金や分配金の支払をすることがあります。一方、CF支援者は資金提供で投資有価証券等の投資勘定を計上し、業績が良ければ配当金や分配金を受け取ることができます。

文:庄村裕(ビズサプリパートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.110 2020.2.14)より転載

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