社員が3人、5人、10人、100人と成長するスタートアップには悩ましい課題が生まれる。人事だ。採用・育成はもちろんのこと、昇給・昇格、評価、異動、人事制度・労務管理……と“会社らしい”仕組みづくりがより求められる一方で、 “スタートアップらしい” 新しい勤務体制・組織の構築も不可欠である。

4月25日、都内で、Coral CapitalでTalent Managerを務める津田遼氏をモデレーターとして、スタートアップの人事責任者3氏を交えたパネル討論会が開かれた。その内容をもとに、成長するスタートアップ人事のコツとツボを考えてみたい。

モデレーター:Coral Capital Talent Manager 津田遼氏

日本GEのファイナンス部門でFP&Aアナリストとして経験を積み、グリーに人事として入社。中途採用、組織人事(HRBP)、米国子会社人事、派遣採用・労務管理、BPOなどに従事。Coral Capital(東京都千代田区)では投資先スタートアップの採用支援とコミュニティー構築・運営を行う。 

以下、登壇者:

SmartHR 人事責任者 薮田孝仁氏
2006年からECナビ(現Voyage Group)でWebディレクターとして勤務。08年にライブドア入社。11年末から人事にキャリアチェンジ。その後は経営統合によりNHN Japanへ移籍。18年12月からSmartHR(東京都港区)の人事責任者。

コネクテッドロボティクス COO 佐藤泰樹氏
2008年上智大学理工学部卒、リンクアンドモチベーションなどを経て、17年4月にH.I.S.澤田氏が主宰する澤田経営道場へ入塾。変なカフェ店長、オクトシェフ店長を経て、調理ロボットサービス事業を手がけるコネクテッドロボティクス(東京都小金井市)で現在、事業開発を担当。

Holmes 採用責任者 増井隆文氏
NTTデータや外資系製薬企業の人事企画やHRBPを経験後、グリーでゲーム事業や広告メディア事業の人事マネ ージャーとして新規事業や事業再編を推進。2019年からHolmes(東京都千代田区)で採用責任者。

自社独自のカルチャーをどう醸成していくか 

Coral Capitalの津田氏

津田氏は、組織づくりで重要なのは、まず、そのスタートアップ独自の「カルチャー」をどうつくり、社内に根づかせていくかだとする。そのためには、かたちとしては見えないカルチャーを体現する仕組みづくりが大切である。この点について、3氏はどう考えているのか。

薮田氏は、SmartHRの特徴は「オープンなコミュニケーション」とする。同社に人事として入社した際、まず全社員と面談を行い、SmartHRにとって残すべきものは何か、成長の過程で変えないといけないものは何かを模索したという。その中で「オープン」であることの重要性や、組織にもたらす効能をより感じとったという。   

佐藤氏は、コネクテッドロボティクスの社内には「常に『ロボコン(ロボットコンテスト)』のような文化がある」と語る。ロボットを通じてエンジニアをはじめ社員がつながっている感覚だ。海外人材の比率も高く、それぞれの仕事の決裁権を各社員が担い、「経営陣はゴールだけを決めるといったスタイルで、最後までやり遂げることがカルチャーになっている」とする。

Holmesの増井氏

増井氏は「ウィンパーティ」の開催と継続がカルチャーの浸透に貢献しているとする。ウィンパーティとは社内表彰イベント的な発表会のことで、成果や進捗度合いを各社員が発表しあい、承認しあう。そのイベントを年度や半期ごとではなく、2週間に1回と頻繁に実施する。その場で、増井氏は「承認するとともに、承認されることも大事であり、承認される義務がある」とする。ちなみに、そのウィンパーティのファシリテーターは社長が担う。社長が率先して取り組むことが、承認しあう文化をつくっていくうえでは大切だと考えている。

また、増井氏は現状のカルチャーに適合する人材の採用も重要だが、カルチャーは変容するもの、ととらえる。例えば、現状から時価総額1000億円の会社をめざそうと考えたとき、現在のカルチャーに合う人を採用し続けるのではなく、「中長期的な目線で、いかに時価総額1000億円の会社のカルチャーに適応できる人材を採用するか、育成するか、その見極めも人事の役割」とする。