慶応大学発のベンチャー企業で人工クモの糸の大量生産化を進める、スパイバーが海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)などを引受先とする第三者割当増資を実施しました。調達金額は50億円。山形県鶴岡市に本社を構える同社は、クモの糸の本格的な量産化に向けて、タイ国東部ラヨーン県の工業団地に生産拠点を新設することを決めました。鶴岡の工場の約100倍規模の生産が可能となります。工場の本格稼働は2021年を予定し、今か今かと待ち焦がれた夢の材料の工業化に注目が集まっています。

この記事では以下の情報が得られます。

  • ①スパイバーの業績と資金調達状況
  • ②クモの糸の将来性                                 
「MOON PARKA」
「MOON PARKA」

クモの糸大量生産のカギは微生物に

夢の繊維と呼ばれる「クモの糸」。強度は鉄鋼の4倍、ナイロンよりも伸縮性があり、耐熱温度は300度Cを超えるといわれています。クモの糸は衝撃を吸収する性質が極めて高く、自動車や航空機などの素材を激変させる可能性があります。硬い炭素繊維と吸収力の高いクモの糸が組み合わせることで、輸送機器は安全性を高め、軽量化と燃費性能を高めることができるのです。

長年多くの研究者が大量生産に向けて試行錯誤してきましたが、現在まで工業化するまでには至っていません。理由は2つあります。

  • ①生産コスト
  • ②環境への影響

                               

1つ目から。クモは凶暴で縄張り意識が強く、蚕のように養殖することができません。また、一匹のクモが数種類の糸を吐き出すため、質を担保できないという問題点がありました。そこで、遺伝子工学を駆使してクモが作るたんぱく質を別の方法で抽出しようとしているのです。

これが非常に難易度が高く、本格的な大量生産化には至っていません。研究開発費と設備投資がかさむわりに、とれる繊維が少ないのです。

2つ目は、クモの糸を溶かすための溶剤の毒性が高いこと。クモの糸は丈夫で非常に溶けにくい性質があり、それを加工するためには強力なフッ素系薬剤が必要となります。その溶剤が環境に及ぼす影響を懸念する声が上がっているのです。

スパイバーはたんぱく質を生産するため、微生物を宿主とし、アミノ配列の変更することで生産効率を上げました。同社は世界最高水準の生産性を獲得しています。同時にフッ素系以外の薬剤でたんぱく質を溶かす溶媒を発見し、環境に負荷のかからない生産方法を確立しました。

しかしながら、今のところクモの糸の使用は、ゴールドウイン<8111>との協力で誕生したアパレル商品や、自動車のシートといった一部用途に限定されています。生産体制を築いたとはいえ、とれる量はまだまだわずかなためです。

レクサス・シート
レクサスのシートでクモの糸繊維を使用


調達資金162億円で売上高2億円の超高難度ビジネス

スパイバーの業績推移を見てみましょう。

▼過去5年の業績推移


売上高営業利益
2017年12月期2億円△27億1600万円
2016年12月期3億9400万円△19億5400万円
2015年12月期2億9100万円△12億1700万円
2014年12月期2億9100万円△4億9800万円
2013年12月期1億6300万円△4億1200万円

決算公告より

同社は2017年11月までで162億4372万円の資金を調達していますが、2017年12月期で売上高は2億円ほど。まだまだ研究開発段階で、営業フェーズには至っていないことがわかります。本社は山形県鶴岡市にあり、東京営業所などを設けてもいません。

次に資金調達の状況を見てみましょう。