どうやって受託の罠と死の谷を乗り越えるのか|受託の罠と死の谷の脱出ルート(最終回)

この連載コラムのテーマは、スタートアップが直面する「受託の罠」と「死の谷」について、CJM(キャッシュジャーニーマップ)というフレームワークを用いて考察することでした。では、テックギークスタートアップは「受託の罠」をどのようにすり抜け、さらに「死の谷」をどうクリアしたらよいのでしょうか。

”ゴルゴ13”並みのテックギークスタートアップ

実のところ、本当に優れたテックギークスタートアップは比較的早く「受託の罠」と「死の谷」を超えていく可能性を秘めています。 なぜなら、優れた技術があるため、仮に受託のような仕事であっても、かなりの高単価でかつ次のステップにつながるような案件を厳選してこなすことができるからです。 

これは「ゴルゴ13」の仕事を考えればわかり易いでしょう。ゴルゴ13は、類まれな狙撃力、戦闘力(技術)を有するため、米軍でさえ太刀打ちすることは不可能です。ゴルゴほど技術的優位性が圧倒的だと、仕事は選び放題、報酬も完全に言い値です。さらにその後の展開を考え、仕事の内容を選ぶことも可能です。

プリ画像 byGMO

もし、ゴルゴがさらなる狙撃の名手になることを目指すのであれば、狙撃の案件を重点的に受託することができます。各国の極秘情報をデータベース化し、そのデータを定額性で販売するSaaSビジネスを展開するならば、機密情報に触れる機会の多い案件を受託することが、サブスクリプション型ビジネスに向けた近道かも知れません。

また、世界各国の次世代暗殺者を養成するための極秘オンライントレーニング/ライセンスビジネスを展開するならば、さまざまな暗殺手法を網羅的にブラッシュアップしていくことが有効です。しかし、ゴルゴはそのような「レバレッジをかけてビジネスをスケールさせる」なんてことはしません。いつだって自分の身一つで戦場に飛び込んでいくのです。そこがゴルゴの痺れるところです。

・・・少し脱線しました。本題に戻りましょう。スーパー天才エンジニアが、受託の罠と死の谷を乗り越えるのも同様です。もし将来一定の方向でビジネスを強化していくことを考えるならば、自社のプラダクト/ソリューション開発につながる受託案件を効率的に高単価でこなして、その営業キャッシュフローで次の展開に投資していくことが可能でしょう。いわゆる「有償POC*を積み上げる」という戦略です。多少時間はかかりますが、ライフタイムを伸ばし、資本政策上も希薄化を防ぐのには有効です。*POC(Proof of Concept;概念実証の意)

このような有償POCの積み上げから最初のプロダクトの開発までうまくこぎつけることができれば、テックギークスタートアップとしては大きな死の谷を越える可能性が高くなるといえます。

これはいわゆる「PMF」(プロダクトマーケットフィット)の証明につながり、次なる資金調達の道も開けてくるからです。そして資金調達に成功し、前回の記事で書いた「マッチョなビジネス力」を発揮できるようなチーム体制を組むことができれば、テックギークスタートアップはさしたる希薄化もせず、一気にスケールが可能な起業家にとって理想のビジネスになる可能性があります。

フリーランス/受託型ビジネスから テックギークスタートアップへの展開
筆者作成