米ゼロックスによるHP買収報道もあるが、実現性は…

富士フイルムによる買収を上回る年間20億ドル(約2100億円)のコストダウン効果が見込める案件とされるが、HPの時価総額は270億ドル(2兆9400億円)とゼロックス(80億4800万ドル=約8700億円)の約3.3倍以上と大きい。富士ゼロックス株の売却益だけでの買収は不可能だ。買収資金をどのように調達するのか、先行きは全く不透明だ。

仮にHPの買収に成功したとして、同社はインターネットデバイス(端末)がパソコンからスマートフォンへのシフトが進み、業績は苦戦気味。同社の稼ぎ頭で、ゼロックスが統合効果を狙うデジタル印刷機(プリンター)部門も売上減に見舞われている。HPがゼロックスにとって新たな「お荷物」になる可能性も否定できない。

米ゼロックスと統合効果が高いHPのデジタル印刷事業も頭打ち(HPホームページより)

「過小評価」を理由にした買収反対で有名なのは米ヤフー。2008年2月に米マイクロソフトが現金と株式の合わせて446億ドル(4兆8600億円)で買収を持ちかけた。これに米ヤフーは「ブランドや成長見通しを過小評価している」と買収提案を拒否する。

しかし、米ヤフーの業績は同9月のリーマン・ショックで一気に悪化。経営再建もことごとく失敗し、2016年7月に米通信大手のベライゾン・コミュニケーションズが米ヤフーのほぼ全ての事業を約48億3000万ドル(約5200億円)で買収し、事業部門はベライゾン傘下のAOLに統合された。その8年前にマイクロソフトが提示した買収額のわずか9分の1以下だった。

コピーやプリンターのような「紙に印刷する」需要は今後持ち直す可能性もなく、ゼロックスを取り巻く経営環境の悪化はさらに加速する。ゼロックスの株主も、数年後に「富士フイルムに買収された方が良かった」と後悔することになるかもしれない。

文:M&A Online編集部