三原則で「賢いM&A」

2010年代に入ると国内では石炭に代わる新規事業の獲得に乗り出す。その原動力となったのがM&Aだ。2012年には石炭の選別技術をもとに燃焼灰から未燃カーボン、産業廃棄物から非鉄金属類を選別するエンジニアリング事業を展開する永田エンジニアリング(北九州市若松区)と、国内でリゾート型宿泊施設の運営や民間企業・地方自治体が所有する保養所・研修所などの運営受託事業を展開するエムアンドエムサービス(大阪市中央区)を相次いで100%出資の完全子会社化している。

2014年に大手乳業・飲料メーカー向け伸縮ストロー製造大手の日本ストロー(東京都品川区)を、2015年に百貨店向けオーダースーツをはじめとする紳士服・婦人服・ワイシャツ受託生産大手の花菱縫製(さいたま市岩槻区)を、2016年には液晶パネルや半導体で用いられるフォトマスクの原材料であるマスクブランクスの成膜加工を手掛けるクリーンサアフェイス技術(神奈川県寒川町)を、いずれも完全子会社化した。

そして今回の明光商会だ。三井松島HDは株式併合で、明光商会を完全子会社にする。一見すると手あたり次第の買収に見えるが、一連のM&Aには共通した戦略がある。「安定収益」「ニッチ市場」「分かりやすい」の3つだ。この3つの条件を満たしていれば、高成長企業でなくても構わないという。

多くの企業は本業が傾くと、手っ取り早く収益につながる高成長企業を買収したがる。だが、そうした企業は買収価格が高騰し、高成長も一時的なもので終わることが少なくない。「高値づかみ」で大損をこうむることになり、自社の経営を傾かせることすらある。

三井松島HDのM&A三原則に該当するのは、高成長企業ではなく成熟企業だ。買収価格も高くない。買収で短期的に収益が急上昇するわけではないが、損をするリスクは低く長い目で見れば確実に収益を得られる「賢い」戦略なのだ。

事実、2018年3月期決算では買収したビジネス(生活関連事業)で主力のエネルギー事業の14億3900万円に迫る11億1300万円もの利益をあげている。M&Aで新たな事業の柱を構築したい企業にとっては、参考になる戦略だろう。

三井松島HDの主要買収リスト
買収年 企業名 年間売上高 取得価額買収比率
2012 永田エンジニアリング 非公表 非公表
2012 エムアンドエムサービス 65.44 非公表
2014 日本ストロー 38.18 31.00 81.2%
2015 花菱縫製 44.96 非公表
2017 クリーンサアフェイス技術 26.81 40.20 149.9%
2019 明光商会 83.18 65.07 78.2%
    単位:億円 単位:億円 買収額÷売上高


文:M&A Online編集部