EVシフトは株式市場からのシグナル

一方、EVは電気さえ通じていれば充電は可能だ。一般ユーザーでも太陽光発電や小水力発電などで電力を自給できるが、ガソリンを自給するのは油田と精製設備がない限り不可能だ。つまりガソリンが「湯水のように」使える環境でない限り、ガソリンエンジン車は役に立たない。

これは決して「遠い未来の話」ではない。日本のガソリンスタンド軒数は1994年度の6万421軒をピークに減少を続け、2019年度には半分以下の3万70軒にまで減少。すでに現時点で3万軒を切っているのは確実だ。

岡山県西粟倉村では2020年3月にガソリンスタンド事業者が撤退し、村営に切り替えた。村では農業用水で発電する出力5キロワットの小水力発電所を開設し、そこに車両用急速充電器を設置するなどEVへの転換を進めている。

同村では村役場や高齢者生活福祉センター、道の駅などにも急速充電器を設置しており、今やガソリンスタンドよりもEV向けの電気スタンド(急速充電器)の方が多い。これは、いずれ日本だけでなく世界中で見られる現象になるだろう。

トヨタが時価総額でテスラを追い抜くには、現在のハイブリッド車(HV)依存を改める必要がある。HVも燃料はガソリンであり、脱石油のエネルギーシフトが進めば生き残れないからだ。トヨタもEVの自社開発に取り組んでいるが、スピードアップを図る必要がある。

中国のバイトン(拜騰)やNIO(蔚来汽車)、小鵬汽車といったEVスタートアップ企業は業績が伸び悩んでおり、トヨタが出資または買収して大市場の中国で一気に地盤を固めることも考えられるだろう。

自動車業界に限らず、エネルギーシフトは一気に進む。テスラの時価総額がトヨタを超えたという株式市場からのシグナルを見逃すことなく、直ちに経営戦略を転換する必要がある。これは何もトヨタだけの話ではない。自動車業界全体に突きつけられた問題といえる。

文:M&A Online編集部