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武田薬品がシャイアー買収で使う「スキーム・オブ・アレンジメント」と「産業競争力強化法」の改正とは

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武田薬品のグローバル本社

裁判所の認可で全株を取得

一方、英国の制度であるスキーム・オブ・アレンジメントは、シャイアーの株主集会や裁判所の認可などを経て実施される。シャイアーの半数以上の株主が買収に賛成し、さらに議決権の75%以上を占める株主の賛成が得られれば、裁判所の認可によって、買収に反対する株主がいても強制的にシャイアーの全株式を武田薬品が取得できる。

シャイアーは2018年の10月-12月の間にシャイアーの株主に株主通知書類を発送し、英国の裁判所の指示に従ってシャイアーの株主集会を開催する。その後、裁判所の認可が得られれば、スキーム・オブ・アレンジメントの効力が発生する。

M&Aに詳しい森・濱田松本法律事務所パートナーの大石篤史弁護士によると「海外企業の株式取得の対価に自社株を使うとなると、原則として検査役の調査などが必要となるため、これまで自社株対価のクロスボーダーM&Aはあまり行われてこなかった。産業競争力強化法の改正による会社法の特例措置によって、そのような制約がなくなるので、自社株対価のM&Aは大きく促進されることなる。外国でスキーム・オブ・アレンジメントが行われる場合でも、その特例は使えることとなる見込みだ」とし、今後武田薬品のような事例が増えると分析する。

さらに自社株対価のM&Aについては、対価となる株式を取得する株主に対する課税繰延が実施される。これについても「日本国内の株主が多いM&Aでは、新しい課税繰延措置の効果は非常に大きいと思われる。これまでは課税されていた株式の一部取得についても、一定の条件を満たせば課税繰延が認められるようになったため、より一層大きな効果が期待できる」としている。

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大石 篤史おおいし・あつし)
弁護士、税理士、米国ニューヨーク州弁護士(森・濱田松本法律事務所パートナー)

1996年東京大学法学部卒業
2003年ニューヨーク大学ロースクール卒業
2003年ニューヨーク市Weil, Gotshal & Manges法律事務所で執務
2007年 経済産業省「MBO取引等に関するタスクフォース」メンバー
2013年 経済産業省「タックスヘイブン対策税制及び無形資産に関する研究会」委員
2016年 早稲田大学「国際ファミリービジネス総合研究所」招聘研究員

2006年より森・濱田松本法律事務所パートナー。M&A・組織再編ではデュー・ディリジェンスや契約交渉などの一般的なコーポレート業務のほか、ストラクチャリングを得意とする。税務では投資ストラクチャーの組成やウェルスマネジメントを含むタックス・プランニングのほか、税務調査対応を含む税務争訟を取り扱っている。

取材・文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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