物流担う郵船ロジスティクスを完全子会社

4月にスタートした新中期経営計画「Staying Ahead 2022」は基本戦略として、「市況耐性の高い事業ポートフォリオの確立」を掲げる。海運事業は船舶需給や燃料価格などの変動要因に翻弄されがちだ。

不定期船ではドライバルク(ばら積み船)事業の抜本的な見直しによる収益構造の改善を推し進める。一方、定期コンテナ船は事業統合で効率化とスケールメリットを追求する戦略にすでに転換しており、今後、シナジー(相乗効果)をどう具現化するかが課題となる。統合会社ONEはサービス開始時の混乱が収束し、7月から順調に稼働しているという。

日本郵船は2008年3月期に売上高2兆5846億円、経常利益1985億円という空前の業績を記録した。世界的な海上運賃の高騰が業績を押し上げた。しかし、リーマンショック後の世界同時不況による海運不況や円高、石油高で業績は急降下。コンテナ船事業の統合も、海運市況の低迷が背中を押した。

今年1月には上場の物流子会社、郵船ロジスティクスをTOB株式公開買い付け)によって完全子会社化した。株式取得に約255億円を投じた。

郵船ロジスティクスを中核とする物流事業は航空運送や海上運送の前後の貨物の一時保管や管理、流通加工、トラック・鉄道による陸上輸送までさまざまなソリューションサービスからなる。物流は運賃安定型事業と位置付けており、今回の新中計でも「物流を中核事業と再定義する」とし、事業間連携や経営資源の相互利用にアクセルを踏み込む姿勢だ。

空の“主役”の今後は

日本郵船は世界最大規模の船隊を持つ海運はもちろん、陸・空における物流や、その周辺サービスの拡充を進めてきた。現在、海・陸・空を結ぶ総合物流企業として旗幟を鮮明にしている。

海ではコンテナ船事業統合という抜本策を講じ、陸を担う郵船ロジスティクスを100%子会社として取り込み、着々と布石を打ってきた。そうした中、空の主役であるべきNCAは事実上謹慎中で、捲土重来を期すしかない状況に置かれている。航空運送事業をめぐっては局面転回の起爆剤として新たな合従連衡の可能性もあり、次の一手ががぜん注目される。

主な沿革とM&A
1885 郵便汽船三菱と共同運輸の合併により、日本郵船が発足
1945 終戦時、所有船舶37隻、15万5469総トン(戦禍による喪失船舶185隻、113万1424総トン)
   
1959 国際旅行公社に出資し、郵船航空サービスに社名変更
1978 邦船4社と全日空の出資で日本貨物航空(NCA)設立
1991 日本ライナーシステム(山下新日本汽船とジャパンラインのコンテナ部門)を吸収合併
1998 昭和海運を合併
2001 在来船事業を日之出汽船(後に日之出郵船に社名変更)に移管
2004 一貫輸送物流と国内の3PLを主力とするNYKロジスティックスジャパンを設立
2005 日本貨物航空を連結子会社化
2010 定期船事業の本社機能をシンガポールに移管
郵船航空サービスとNYKロジスティックス、日本郵船海外物流事業が統合し、郵船ロジスティクス発足
クニュツェン・オフショア・タンカーズ(ノルウェー)に50%出資し、邦船初のシャトルタンカー事業進出
2013 日之出郵船とNYKグローバルバルクが合併し、NYKバルク・プロジェクト貨物輸送(現NYKバルク・プロジェクト)発足
2016 日本郵船、商船三井、川崎汽船が定期コンテナ船事業の統合計画を発表
2018 (1月)郵船ロジスティクスをTOBで完全子会社化
  (4月)定期コンテナ船事業の統合会社「ONE」が営業開始
  (7月)国交省が傘下の日本貨物航空に事業改善命令など

文:M&A Online編集部