統合すべき次世代技術は「各社で対応」

さらにスナール会長は新アライアンス戦略で「プラットフォームはモデルに関わる費用の3分の1程度でしかない。真のインパクトを競争力に生かすには、共通部分をプラットフォームからアッパーボディにまで拡大させる」と説明した。これはいかにもアライアンスを「深化」させるかのような発言だが、実は全くの逆。単にそれぞれのメーカーの生産車種を相互供給するOEM(相手先ブランドによる生産)にすぎない。

日産がスズキ<7269>から軽ワゴン車「エブリイワゴン」の供給を受けて「NV100クリッパーリオ」として販売しているようなもの。この程度のことならば、資本関係がない自動車メーカー間では日常茶飯の出来事だ。つまりプラットフォームという基幹部品の共用は抜き差しならない資本関係下にないとできないが、アッパーボディーまで共通化した完成車をアライアンスメーカーで作り分けるのであれば、資本関係をいつでも解消できる。

ルノーが日産と距離をおきたがっている理由は明白だ。これまでは多額の連結利益と配当をルノーにもたらしていた日産が、2020年3月期決算で6712億円もの最終赤字となった。2021年3月期に業績がV字回復すればよいが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより自動車市場は全世界で冷え込む見通しだ。

2期連続の巨額赤字となると、日産よりも経営規模が小さいルノーにとっては自社の経営を危機に陥れかねない一大事となる。筆頭株主であるフランス政府も、ルノーに日産との「縁切り」で経営リスクを減らすよう圧力をかけてくるはずだ。もちろんルノー単独での生き残りは厳しく、米フォード・モーターや一度はご破算になった欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との資本提携または経営統合も模索していると伝えられている。

その場合は「お荷物」と化した日産を一緒に連れて行くことはないだろう。むしろ巨額赤字を抱える日産を切り離すことが、新たな資本提携や経営統合の条件となるはずだ。スナール会長は新アライアンス計画の発表会見で、これまでの経営統合一辺倒の姿勢から一転して「統合は必要ない」と断言した。

日産は「ルノーは経営統合構想を棚上げしてでも、わが社との協業を急ぐ考えだ」と評価するが、今後の同社の業績次第では第三のメーカーに売り払われる可能性もある。少なくとも新たなアライアンス戦略へ方向転換してしまえば、日産を手放したとしてもルノーは痛くも痒くもないのだ。

ルノー・スナール会長の視線は「日産のその先」に向けられている?(日産ホームページより)

文:M&A Online編集部