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【会計コラム】今後の外食業界のあり方
外食産業の国内市場は25.6兆円とそれなりの規模ですが、特別な技術が必要な業界ではないため、業態の模倣もし易く、参入障壁の低い業界です。上場企業でも営業利益率が10%を超えている企業は数えるほどしかありません。
ハイデイ日高<7611>と幸楽苑ホールディングス<7554>は、2018年に売上高で20億6700万円、営業利益で47億5100万円もの差が開いて日高屋の圧勝でした。しかし、直近の決算では、日高屋が418億6200万円、幸楽苑が412億6800万円と、売上が肉薄する結果となりました。
ついに日高屋を追い越すようにも見える幸楽苑ですが、着実な歩みを進めるライバルの背中はまだ遠いところにありそうです。
この記事は、両社の経営戦略の違いを見定めた上で、経営指標にどのような違いが生じているのかを解説するものです。
日高屋と幸楽苑は、低価格の大衆系ラーメン店の代名詞です。日高屋は全国429店舗(2019年2月末時点)、幸楽苑は533店舗(2019年3月末時点)を出店しています。日高屋の「中華そば」は390円、幸楽苑は440円。店舗数や価格帯は近いところにあります。
両社の大きな違いは出店戦略です。
日高屋は都市部の駅から近い物件を中心に出店しました。ハンバーガーや牛丼を食べるファーストフードの客層をターゲットとしたのです。
一方、幸楽苑はロードサイドや郊外のショッピングセンターなどが中心です。同社は出店形態の多様化を重視しているため、都市部への集中出店ではなく、全国に様々な形の店舗を出店したのです。
東京の店舗を見ると、日高屋は新宿区に18軒、渋谷区に6軒、品川区に9軒出店しています。幸楽苑は上の3つの区の中では、渋谷の道玄坂1店舗だけです。
日高屋は都市部で学生や会社員を中心とした客数で稼ぐ戦略をとり、幸楽苑はロードサイドで家族連れを取り込んで客単価を上げようとしたのです。
その後、日高屋は地の利を活かして単価を稼ぐ、画期的な戦略を打ち出しました。それが「ちょい飲み」です。おつまみを充実させて、アルコール需要を取り込んだのです。生ビールが330円、餃子が230円、枝豆が170円、冷奴が200円。合計930円です。この手軽さが会社員にうけました。
ロードサイドなどが中心となる幸楽苑は、アルコール需要を獲得しにくい出店形態です。両社の明暗が分かれてきました。
外食産業の国内市場は25.6兆円とそれなりの規模ですが、特別な技術が必要な業界ではないため、業態の模倣もし易く、参入障壁の低い業界です。上場企業でも営業利益率が10%を超えている企業は数えるほどしかありません。