「世界最高の部品を大量に高く買う」調達戦略で成功したアップル

理由はアップルの調達戦略にある。かつてアップルは特定のサプライヤー(部品メーカー)に集中発注し、「発注量が多ければ値切る」のが当たり前の部品調達で「発注量が他社より1ケタ、2ケタ多いのに、他社より高く買う」戦略をとった。

それと引き換えにサプライヤーには「世界最高水準の部品を世界最高品質で供給する」ことを求めた。新潟県燕市の金属表面加工企業がアップルと取引をして話題になったのも、その当時の話である。アップルのiPhoneはスマホの世界最量販機種となり、技術革新をリードした。

一般にこうした調達戦略はコスト高となる「禁じ手」だが、アップルはiPhoneの価格を高く設定することにより、上昇したコストを吸収。iPhoneブランドは高級品と認識され、高くても売れた。その結果、利益率は低価格帯のスマホを上回り、アップル成長の原動力となる。

ところがアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が2011年に亡くなり、ティム・クック氏が最高経営責任者(CEO)に就任すると、調達戦略は大転換した。一つはコスト削減。ジョブズ時代の「良いモノであれば高く買う」から「そこそこ良いモノを安く買う」に大転換したのだ。

創業者であるジョブズ氏の死で、アップルの調達戦略は一変した(Photo by Ben Stanfield)

当然、サプライヤーは調達価格が「安く」なれば、より「高く」買ってくれるメーカーを大事にする。かつてはスマホで断トツの性能と品質を誇ったiPhoneも、最近では競合するアンドロイドOS搭載スマホと同等かそれ以下のレベルに甘んじている。これは「世界最高の部品」を真っ先に調達できなくなった影響が大きい。

それでもデザインとブランド力で、なんとかiPhoneの売れ行きを維持している状態だ。しかし、その「神通力」にもかげりがみえる。現行機種の「iPhone XR」は、発売後わずか1カ月で異例の値引きに追い込まれた。調達部品の「買い叩き」がアップル製品の競争力を低下させているのは間違いない。

もう一つは分散調達。部品を複数のサプライヤーから調達する戦略で、アップルは「Project Antique」と呼ぶ。サプライヤー1社へ集中発注した場合、何らかのトラブルが発生した場合に製品生産が止まる。東日本大震災で系列サプライヤーが被災してトヨタ車の生産が止まったケースなどが、それに当たる。

同時に他サプライヤーとの価格競争が起こらず、力関係によっては調達価格の上昇につながる。アップルは、そうした「弊害」を避けようと分散調達に走ったのだ。