調達戦略の変化で回ってきた「ツケ」

アップルとクアルコムの関係悪化は、まさにそうした両社の力関係による調達価格のイザコザがきっかけになった。2011~2016年に発売したiPhoneのモデムはクアルコムへの集中発注だったが、2016年に発売した「iPhone7」と「同Plus」ではクアルコムとインテルから分散調達した。

ところがスマホのテストサイトでクアルコム製モデムの方がインテル製より30%も速度が速いと指摘され、クアルコムモデム搭載モデルが「あたり」、インテルモデム搭載モデルが「はずれ」と呼ばれることに。そうなるとクアルコムは価格交渉で強気に出る。

それがアップルを激怒させる「ライセンス料金問題」につながった。両社の係争を受けて2018年に発売した「iPhone XS」や「iPhone XR」といった最新モデルでは、インテルからの集中調達となる。これはアップルが望んだのではなく、クアルコムからモデム供給を拒否されたためという。

結局のところ、アップルは悪く言えば自らの「サプライヤーいじめ」のせいで5Gに乗り遅れることとなった。クアルコムと和解したとはいえ、状況からみて価格面ではクアルコムに譲歩せざるを得ない。しかも、iPhoneが5G対応できるのは早くても2020年9月になりそうだ。

集中調達によりモデムチップの価格主導権はクアルコムが握ることに(同社ホームページより)

「本格的に5Gのサービスエリアが広がるのは2020年以降なので、大きな影響はない」との見方は甘い。確かにその通りだが、毎年スマホを買い替えるユーザーは多くない。5Gに対応せず時代遅れになるのが分かっている2019年発売のiPhoneを買い控える動きは広がるだろう。

そうなれば主力製品のiPhoneが2年連続で販売不振という、かつてない事態に陥る。アップルの業績や株価に与える影響も深刻だ。アップルのサプライヤー軽視のツケが、5G時代の到来とともに回ってきたのである。

文:M&A online編集部