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トヨタのEV急拡大で、万全だったサプライチェーンに「黄信号」

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トヨタのEV組立工場(Photo By Reuters)

系列に支えられたトヨタの「強み」はどうなる?

新型電池の開発・生産計画、品質保証、物流については、系列外のメーカーがトヨタの要請に無条件で対応してくれるとは限らない。電池の調達価格が適正なのか調べようにも、LGやCATL、BYDが電池生産のコスト構造や生産プロセスの詳細をトヨタに明かすとは考えにくい。EV電池ではコスト削減の余地を指摘して値引きを引き出すトヨタ流の価格交渉力を発揮するのは難しくなる。

併せてEV生産に乗り遅れたトヨタは自動車メーカーとしては世界最大手でも、EVメーカーとしては後発の中小メーカーにすぎない。EVメーカーだけを相手にしている車載電池メーカーにとっては、それほど重要ではない顧客だ。EV電池の需要拡大と生産不足が顕著になれば、供給を後回しにされる可能性すらある。

かつて日本家電メーカーがコスト削減のために国内の系列企業を切り捨て、アジア企業に生産を委託したところ、思うようにコントロールできず商品競争力を失った。トヨタもその恐ろしさを知っている。だからグループ企業の豊田通商と共同で米ノースカロライナ州に車載電池工場を建設しており、2025年に稼働する予定だ。

ただ、こうした自動車部品の「内製化」は、どうしてもコストが高騰してしまう。BYDのようにEVと車載電池の両方を製造・販売するのならば、内製化とコストダウンは両立できる。だが、LGからの調達が決まっても、トヨタが2026年の目標とする年産150万台の半分しかメドがついていない。BYDのように車載電池を外部販売する余裕はない。

EVで最も高価な部品は車載電池だ。それが系列外からの調達となると、トヨタが得意とするコストダウンは難しくなる。トヨタ車に最適な車載電池の開発も、系列外企業相手では苦労するはずだ。さすがに明言はしないだろうが、「そんな面倒くさいことを要求するのなら、他社を当たってもらえませんか?電池の買い手はいくらでもいるんです」が、系列外車載電池メーカーの本音なのだ。

文:M&A Online

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