近年、"愛社精神"の高さや、組織と従業員とのつながり・関係性を重視する「従業員エンゲージメント」が注目されています。従来、離職防止の観点から「従業員満足度(ES)」が重視されていましたが、現在は、組織の持続的な成長の観点から、従業員エンゲージメント向上で組織への自発的な貢献意欲の高い人材育成を目指す組織が増えています。
■従業員エンゲージメントとは
従業員エンゲージメントとは、HR(人的資源)領域において「従業員の会社に対する愛情度」を示す指標です。従業員のモチベーションや生産性の向上、優秀人材の離職リスク低減など、組織を持続的に成長させる要因に、この指標が大きく影響するとされ、多くの企業がエンゲージメント向上のための施策に取り組んでいます。
■なぜ、従業員エンゲージメントが高まると組織の成果が出やすくなるのか?
従業員エンゲージメントを別の表現で表すと、「組織に貢献できている」満足度とも言えます。自分の仕事が組織の目標と一体化することで得られる満足感は、自身の成長実感ややりがいの創出にもつながります。そして、この利己的な満足感を得るための自発的な意欲が"活力"を高め、自身の満足だけでなく組織の成果にも結びつくという好循環が、組織の成果を出やすくしていきます。
■従業員エンゲージメントを高める3つの視点
従業員エンゲージメントを高めるためには、①組織全体の視点、②部署・チームの視点、③個人の視点、これら3つの視点から考える必要があります。以下、具体的に見ていきます。
(1) 組織全体の視点
従業員が組織に求めることの最も大きなものとして、給料・報酬への納得感があります。また、評価への納得感、理念への共感、具体的な仕事内容、柔軟な働き方への理解、キャリア形成支援体制など、従業員が組織に愛着を強く持つために必要なことは多岐にわたります。まずは、従業員が組織に求めていることや、既に一定以上満足していることなどを、アセスメントなどを通して把握することが、エンゲージメント醸成への第一歩となります。
(2)部署・チームの視点
従業員が離職する主な理由の一つに、職場の人間関係が悪いことが挙げられます。逆に言えば、職場の人間関係が良ければ組織への愛着度も高まります。例えば、心理的安全性の高い職場にする、お互いの業務を補い合える体制にする、上司が部下に的確なフィードバックを行う、新しいことに挑戦できる環境をつくるなど、メンバー全員が前向きに仕事に取り組める環境をつくることができれば、エンゲージメントは向上していきます。
(3)個人の視点
エンゲージメントを高めるのは、最後は自分自身です。自身が「組織に貢献できている」満足感を得るには、まず自分が組織の中で期待される役割を知る必要があります。そのうえで、期待に応えられるだけの知識・スキルを身につけ、成果を出していこうという主体的な行動が必要です。また、たとえマンネリ化しがちな仕事でも、小さな目標を立ててコツコツ成果を出す、少しずつ改善をするなど、新たなやりがいを作り出すジョブ・クラフティングの意識や、仕事でミスをしたときなどに自己効力感を下げないためのレジリエンスなども重要です。