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【サントリー】「やってみなはれ」M&Aの活用における意思決定力の重要性

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※画像はイメージです

■マーケット動向

業績比較

■売上高比較

■営業利益比較


■ビール類売り上げシェア(2015年)

 国内大手酒類メーカーの勢力図はこの10年で大きく変化した。アサヒビールはスーパードライのヒット以降、国内におけるビール類の売り上げシェアは6年連続首位をキープしている。サントリーにおいてもプレミアムモルツのヒットやハイボールのブーム火付けが功を奏し、ウイスキーの売り上げも好調である。またサントリーはビーム社を買収した事により、他社を大きく引き離し、グループ全体では国内食品メーカーで売り上げ首位である。

 これに対しキリンは大きなヒット商品に恵まれず、M&Aにおいても11年に行ったブラジルのスキンカリオール社の買収が足かせとなり、15年には上場以来(49年)初の赤字(560億円)を計上した。事業領域の拡大やグローバル展開を迅速に行うためにM&Aは有効な施策と言えるが、買収先を見誤ると大きな負の遺産を背負い込む結果を招くこともある。

 日本のビールの売り上げは近年減少の一途をたどっているが、これにはさまざまな要因がある。ただ、明らかなのは成人の嗜好の変化である。これにより、ビール以外の飲料へのシフトが起こり、発泡酒や第三のビール、またハイボールへと移り気なトレンドが次々に訪れ、ビール単体の売り上げは下がっていく。今後の人口減少も考慮すれば、ビール以外の領域への展開はもとより、海外進出は必須となる。

 ただ、足元で見ると、08年から行った「角ハイボール」のプロモーションが大いに当たり、ウイスキーの売り上げは回復基調にある。20代~30代をターゲットにした施策やレストランチャネルの拡充、ドラマ「マッサン」のヒット、英国「Whisky Bible 2015」にて「山崎シングルモルト・シェリーカスク2013」が世界最高のウイスキーに選出されるなどの追い風もあり、国内、海外とも需要が増加している。08年には7.5万キロリットルまで低迷していたウイスキー年間出荷量が14年には11.8万キロリットルと飛躍的に伸びている。国内のウイスキー市場のシェアは、サントリー、ニッカ(アサヒHD)の2社で9割を占めており、寡占状態にある。

 しかし、国内のウイスキー市場が伸びているとはいえ、今後はグローバル戦略の強化が求められる。生産ラインが限られている国内の状況、また熟成に時間がかかるウイスキーの商品特性を考えると、海外メーカーのM&Aによる買収は効率的であると言える。

サントリーのM&A戦略

 サントリーのM&Aはビーム社の買収を機に「ハンズオフ」から「ハンズオン」に変化しつつある。ビーム社買収により有利子負債が1兆6000億円を超えた状況において、買収先のガバナンスの徹底は喫緊の課題である。ただ、老舗のブランド力を持つビーム社において、強硬な手法を取る事は禁物である。ビーム社の優れた部分を生かしながら、オーナーとしてのガバナンスを利かせていく、いわゆる「不易流行」を理念とした経営政策はサントリーのいわば「お家芸」であり、新浪社長を中心としたビームサントリーのガバナンス改革が今後のサントリーの将来に大きな影響を与えることとなる。

総括

 国内のビール市場がシュリンクしていく状況下において、事業ドメインの見直しやグローバル戦略の策定が今後の経営の鍵を握ると言ってよい。有効な戦略としてM&Aが挙げられるが、M&Aを成功させるには迅速な意思決定力と統合後のPMIが重要であり、正にサントリーは、現在その手腕を問われる局面にある。ビールにおいて日本のメーカー4社の世界シェアはわずか4.8%に過ぎず、これから海外勢が日本の酒造メーカーを買収のターゲットとしてくる中、サントリーの今後のグローバル戦略は競合他社への影響力も大きく、引き続き動向が注目されるところである。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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