ワタミ<7522>のM&A戦略に変化が現れてきた。同社は2019年2月18日に、飲食店事業の香港合弁会社Watami China Food & Beverage Company Limitedを完全子会社化する。
ワタミは2015年3月期に営業赤字に転落したのを機に、食ビジネスに経営資源を集中するとともに、財務体質の改善に取り組み、2018年までの3年間で4件の子会社売却を実施した。
こうした取り組みの成果が現れ、2017年3月期に1億8200万円とわずかだが営業黒字に転換。2018年3月期は6億5600万円の営業利益を確保。2019年3月期も7億円の営業利益を見込んでおり、黒字基調が定着してきた。
こうした業績の改善に伴って、M&A戦略に変化が現れてきたわけで、今後どのような手を打ってくるのか。何かと話題の企業だけに注目が集まる。
5期連続の減収 増収に転じる作戦は?
完全子会社化するWatami China Food & Beverage Company Limitedは、合弁パートナーである香港Beautiful Oriental Groupが保有する株式(60%)を取得し、現在40%の持ち株比率を100%に引き上げるという内容。
Watami China Food & Beverage Companyは2016年に、中国やアジアでの日本食市場の拡大を目的に設立されたが、協業のメリットが少なかったため、子会社化によりテコ入れすることした。
ワタミは営業赤字に陥った2015年に、全国111カ所の介護付有料老人ホームを運営する完全子会社のワタミの介護を、損保ジャパン日本興亜ホールディングス(現・SOMPOホールディングス<8630>)に210億円で譲渡することを決めた。
赤字が続く翌2016年にも廃棄物処理管理や再生可能エネルギーなどの環境事業を展開する完全子会社のワタミファーム&エナジーの2つの子会社を、再生可能エネルギーの開発、運営、保守を行うCSSに譲渡することを決めた。
同じ2016年には中国の日本食外食事業子会社を、中国の大手航空会社である海南航空グループに、2018年には手づくり厨房白岡センターの食品加工事業を新東京デリカにそれぞれ譲渡することを決めた。
年 | ワタミの沿革と主なM&A |
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1984 | 渡美商事を設立。「つぼ八」本部とフランチャイズ契約を締結 |
1986 | ワタミを設立 |
1998 | 東京証券取引所市場第二部に株式を上場 |
2000 | 東京証券取引所市場第一部に株式を上場 |
2004 | 農業生産法人当麻グリーンライフと資本提携し、グループ会社化 |
2005 | アールの介護の全株式を取得 |
2005 | ワタミメディカルサービスが自社開発の高齢者マンション(住宅型有料老人ホーム)一号棟を開設 |
2006 | アールの介護とワタミメディカルサービスが合併しワタミの介護に社名を変更 |
2008 | タクショクの全株式を取得 |
2011 | ワタミの介護がデイサービスを開始 |
2011 | ワタミフードサービスがティージーアイ・フライデーズ・ジャパンを吸収合併 |
2015 | 子会社のワタミの介護を譲渡 |
2016 | 子会社の太陽光発電事業会社2社を譲渡 |
2016 | 中国における日本食外食事業子会社を譲渡 |
2018 | 手づくり厨房白岡センターの食品加工事業を新東京デリカに譲渡 |
2019 | 飲食店事業の香港合弁会社Watami China Food & Beverage Company Limitedを子会社化 |
ワタミの利益は改善の傾向を示しているものの、売上高は2015年3月期に減収に転じて以来2019年3月期まで5期連続でマイナスとなる見込み。5年間で4割以上売り上げ規模が縮小した計算になる。
介護事業や再生エネルギー事業を切り離し、身軽になったワタミは、どのような方法で増収に転じる作戦なのか。ここ数年は異業種企業の買収が裏目に出た格好だけに、当面は食ビジネスでのM&Aの出番が多くなりそうだが…。
文:M&A Online編集部