トヨタはEVよりもHVに賭ける

その背景には現行のリチウムイオン電池だと、EV開発で海外メーカーとの厳しい競争にさらされるとの危機感があったと考えられる。そこで日本企業のトヨタが開発で先行している全固体電池の実用化を待って、「日の丸EV」の大攻勢をかけるとの青写真も見えてくる。

全固体電池は冷却が不要なため電池モジュールを小型化できるほか、急速充電にも強いというメリットがある。リチウムイオン電池を搭載するEVの欠点をカバーでき、より実用的なEVを実現する新技術だ。「中途半端なリチウムイオンEVではなく、ガソリン車並みの使い勝手を実現する全固体電池EVで勝負する」という国家戦略が見えてくる。HVはそれまでの「つなぎ」となる。

もっとも、トヨタは全固体電池が実用化されてもEVがHVに取って代わると真剣には考えていないようだ。同社が公表している「電動車普及のマイルストーン」によると、2050年時点でもEVのシェアはHVやPHVに遠く及ばない。経産省の思惑はともかく、トヨタはプラグインハイブリッド車(PHV、大容量の電池を搭載したHV)を含むHVが、今後もエコカーの主流になると見ているのは間違いない。

全固体電池を搭載するEV量産には「本気」だが、EVシフトには「懐疑的」というのが現在のトヨタの立ち位置のようだ。が、トヨタの予想に反してグローバルでEV普及が進んでしまうと、HVに依存するトヨタはじめ日本車メーカーは技術革新で敗退し、世界自動車市場での存在感を失うことになる。EVとHVのどちらに軍配が上がるかで、日本車の「運命」が決まるといえそうだ。

もっとも万一の場合は、豊田章男トヨタ社長が掲げる「仲間づくり」戦略の一環として、実績があるEVメーカーを買収するという「力技」で存在感を示すことになるのかもしれない。

文:M&A online編集部