【センコーGHD】1兆円企業へ「両利きの経営」の一翼担うM&A戦略|中央化学にTOB

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センコーグループホールディングスの本社(東京都江東区)

M&A、コロナ以降に拍車かかる

センコーグループホールディングスは1月末に2023年初のM&Aとして、電気や水回り、カギなど緊急対応時の駆け付けサービスを展開するARS(東京都台東区)の全株式を取得し、子会社化した。2017年に買収した家事代行のイエノナカカンパニー(東京都千代田区)との連携を進め、生活支援サービスの拡充を目指す。

センコーは主なものだけで20件を超えるM&Aを手がけている。その範囲はライフサポート事業、ビジネスサポート事業の新規領域にとどまらず、既存の物流事業、商事・貿易事業を含めて事業ポートフォリオ全般にわたる。とりわけ、2020年のコロナ以降、拍車がかかっている。

大黒柱の国内物流では2020年にUACJ傘下のUACJ物流(名古屋市)、長瀬産業傘下のナガセ物流(現センコーナガセ物流、兵庫県尼崎市)をそれぞれ子会社化。さらに今年3月末には、日立造船傘下のオーナミ(大阪市)がグループ入りすることが決まっている。海外物流では2021年に豪州AIRROAD、2022年にシンガポールAIR PLANNERを傘下に収めた。

商事・貿易事業では家庭紙卸のアズフィット(東京都中央区)を2021年に、カルタス(東京都中央区)を2022年に相次いで子会社化。家庭紙卸業界は人員不足や物流費高騰、小売価格の低迷などに直面し、収益確保が課題となっている。センコーは2013年に子会社化したアスト(大阪市)との卸3社体制による運営効率化とシェア拡大につなげる。

スポーツクラブ、クリーニング…

新規領域のライフサポート事業、ビジネスサポート事業でもM&Aの取り組みはひっきりなしだ。その一つが昨年7月、大阪ガス傘下で関西を中心にスポーツクラブ事業(約60施設)を展開するオージースポーツ(現COSPAウエルネス、大阪市)の子会社化。オージースポーツは売上高は100億円規模で、1981年の設立から業歴40年を超える業界の名門だ。

スポーツクラブ事業で、大阪ガスの傘下企業を買収(写真は埼玉県草加市)

センコーはグループ企業を通じて山梨県を中心にスポーツクラブ事業を手がけている。オージースポーツの買収で事業エリアを関西圏に広げるとともに、介護事業と連携した新サービスに開発などを予定する。

2021年には岡山県を中心に中四国や兵庫県西部に約200店舗を持つクリーニング大手のダイヤクリーニング(岡山県倉敷市)を傘下に収めた。また、2021年から2022年にかけて在留外国人の人材派遣を手がける2社を子会社化した。

戦後、「扇興」の名前で再出発

センコーの歴史は古い。前身企業が1916(大正5)年、日本窒素肥料(現チッソ)の専属物流会社として誕生したことに始まる。戦後、「扇興」の名前で再出発。その名前には日本窒素肥料のシンボルマークだった扇を再興するという志が込められたという。

「1兆円企業」の仲間入りに向け、順当であれば、業績は1~2年後に“胸突き八丁”にさしかかる。既存事業の拡大・深化と成長事業の創出・育成という「両利きの経営」の真価が一段と試されることになりそうだ。

センコーグループホールディングスの主な沿革
1946年 扇興運輸商事を大阪市に設立
1947年 扇興運輸に社名変更
1973年 センコーに社名変更
1990年 東証1部に上場(2022年4月にプライム市場に移行)
2009年 物流サービスの東京納品代行(千葉県市川市)を子会社化
家庭日用品卸の丸藤(神戸市)を子会社化
2011年 包装資材・雑貨卸のスマイル(東京都江東区)を子会社化
2013年 紙製品卸のアスト(大阪市)を子会社化
2014年 冷凍食品輸送のランテック(福岡市)を子会社化
2017年 家事代行サービスのイエノナカカンパニー(東京都千代田区)を子会社化
センコーグループホールディングスに社名変更し、持ち株会社制に移行。本社を東京に移転
JX傘下で海上輸送の日本マリン(東京都港区)、栄吉海運(岡山県玉野市)を子会社化
貨物輸送の安全輸送(横浜市)を子会社化
2018年 航空・海上輸送のタイBest Global Logisticsを子会社化
2020年 装飾品・服飾雑貨卸の寺内(大阪市)を子会社化
UACJ傘下のUACJ物流(名古屋市)を子会社化
長瀬産業傘下のナガセ物流(現センコーナガセ物流、兵庫県尼崎市)を子会社化
2021年 家庭紙卸のアズフィット(東京都中央区)を子会社化
オーストラリアの物流企業AIRROADを子会社化
在留外国人の人材派遣を手がけるセルフ・グロウ(名古屋市)を子会社化
クリーニング大手のダイヤクリーニング(岡山県倉敷市)を子会社化
2022年 家庭紙卸のカルタス(東京都中央区)を子会社化
航空・海上輸送のシンガポールAIR PLANNERを子会社化
大阪ガス傘下でフィットネス事業のオージースポーツ(現COSPAウエルネス、大阪市)を子会社化

三菱商事傘下の中央化学をTOBで子会社化
2023年 1月、暮らしの駆け付けサービスのARS(東京都台東区)を子会社化
3月、日立造船から物流子会社のオーナミ(大阪市)を子会社化

文:M&A Online編集部

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2022-11-10

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