国内では新型コロナによる行動制限が解除され、経済活動が正常化に向かっている。日新製糖の足元の業績はどうか。
2022年3月期業績(国際会計基準)は売上高5.2%増の460億円、営業利益1.9%減の21億6400万円、当期利益51.4%増の17億1500万円。砂糖の販売数量が一部回復し2年ぶりの増収となったものの、海外原糖市況の高騰を受けた原料調達コストやエネルギーコストなどの上昇が響き、営業減益となった。
同社の売上高構成は「砂糖・その他食品事業」が92%、フィットネス事業を中心とする「健康産業事業」が約5%、「倉庫事業」が約3%。
2023年3月期予想は売上高6.4%増の490億円、営業利益26.1%減の16億円、当期利益24.2%減の13億円。観光・外食向け需要の回復に伴う業務用製品の伸びや、きび砂糖の販売増などが売上高を押し上げる一方、原料調達・エネルギーコストの影響拡大を織り込み、2ケタの減益を見込む。
売上高は2010年代前半、新光製糖と経営統合に伴い500億円台に乗せていたが、2015年3月期以降はこれを割り込む状態が続いている。
◎日新製糖の業績推移(単位億円)、23/3期は予想
2020/3期 | 21/3期 | 22/3期 | 23/3期 | |
売上高 | 478 | 437 | 460 | 490 |
営業利益 | 28 | 22 | 21 | 16 |
最終利益 | 21 | 11 | 17 | 13 |
M&Aの取り組みは活発だ。2017年に買収したツキオカフィルム製薬(岐阜県各務原市)は「その他食品事業」の一翼を担う。可食フィルム・食用金箔の製造、印刷物への箔押加工などを手がける。
なかでも期待が大きいのが可食フィルム。デンプンやゼラチンなどの食品素材をベースとし、口の中で素早く溶けるフィルム状食品で、口臭予防食品やサプリメントなど多様な用途が見込まれている。
2018年には中村屋傘下でフィットネス事業のエヌエーシーシステム(東京都渋谷区)を傘下に収めた。日新製糖は総合型スポーツクラブ「ドゥ・スポーツプラザ」、女性専用ホットヨガ「ブレダ」を展開してきたが、ここに24時間コンパクトジムという新業態を取り込んだ。フィットネス施設は現在、6ブランド・30店舗(いずれも関東地区)を数える。
本業領域では2019年に、王子製糖(東京都文京区)の砂糖事業を取得している。そして今回、大型M&Aとして実現の運びとなったのが伊藤忠製糖との経営統合だ。
砂糖の上場メーカーとして、DM三井製糖、日新製糖、日本甜菜製糖、塩水港精糖、東洋精糖、フジ日本精糖が競い合う。砂糖各社はポストコロナを見据え、グローバル展開や多角化推進が課題となっている。上位2社に続き、合従連衡の動きが準大手、中堅に波及する可能性もある。
年 | 主な出来事 |
1950 | 日新製糖が発足 |
〃 | 東証2部上場 |
2011 | 日新製糖と新光製糖が経営統合し、共同持ち株会社「日新製糖ホールディングス」設立(東証2部上場) |
2013 | 日新製糖HDを存続会社とする吸収合併に伴い、「日新製糖」が発足 |
2015 | スポーツクラブ事業のドゥ・スポーツクラブ(東京都中央区)を設立 |
〃 | 東証1部上場 |
2017 | 可食フィルム製造などのツキオカフィルム製薬(岐阜県各務原市)を子会社化 |
2019 | 中村屋傘下でフィットネス事業のエヌエーシーシステム(東京都渋谷区)を子会社化 |
〃 | 王子製糖(東京都文京区)の砂糖事業を取得 |
2020 | ドゥ・スポーツクラブはエヌエーシーシステムを吸収合併し、日新ウエルネスに社名変更 |
2022 | 6月、伊藤忠製糖(愛知県碧南市)と2023年1月に経営統合することで合意 |
文:M&A Online編集部
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