「電子マネー」経済圏の拡大を狙う

約7600万枚の「Suica」を発行するJR東日本は、電子マネー手数料を新たな収益源と位置づけている。同社の中期経営計画「グループ経営ビジョン2020-挑む-」では「Suica事業を経営の第3の柱として確立する」と宣言した。

約2148万枚の「ICOCA」を発行するJR西日本が電子マネー手数料を事業の新たな柱に育てるためには、過疎地でも交通系ICカードを普及させる必要がある。首都圏ほどの人口集積がない西日本では「面」でカバーするしかないからだ。

ICOCAが利用できる区間。現状では山間部はもちろん山口県内でもわずか3駅*しか利用できない(同社ホームページより)
*山陽本線の和木駅、岩国駅、南岩国駅(いずれも岩国市)。下関駅(下関市)も利用可能だが、JR九州のSUGOCAエリア

そこでJRだけでなく、地域ローカルの私鉄やバスにも簡易型IC車載機を搭載してもらい、「ICOCA」経済圏を拡大しようというわけだ。その意味では、JR路線が存在しない地域であっても問題はない。自社の運賃収入につながらなくても、電子マネー手数料が入るからだ。

その典型的な事例となりそうなのが、2019年10月4日に発表されたJR西日本と島根県邑南(おおなん)町による「地方型MaaS」の検討だ。テーマの一つに「地域公共交通のデジタル化とキャッシュレス化」があり、「ICOCA」の利用が前提となっている。

邑南町では2018年3月にJR三江線(三次〜江津)が廃止され、鉄道は存在しない。バスでの「ICOCA」利用を足がかりに、町内の店舗などで電子マネー決済を普及させる流れになるだろう。

JR西日本管内には邑南町のように鉄道が廃止、もしくはもともと存在しない地域も多く、バスにも搭載可能な簡易型IC車載機は「ICOCA」を広く普及させる手段として有望だ。「ICOCA」経済圏が鉄道路線を超えて広がることで、MaaSを軸とするM&Aが活発になる可能性もある。

文:M&A Online編集部