日本でも成り立つFOMMのビジネスモデル

そのほか電機大手の富士通<6702>とも、いつでもどこでもユーザーが簡単にEVの電池を交換できる「バッテリークラウドサービス」の共同開発に取り組んでいる。タイでようやく1号モデルの量産を始めるベンチャーとしては、破格の待遇といえるだろう。その理由は、日本でも十分に成り立つFOMMのビジネスモデルにある。

FOMMの車両には水上移動に加えて、運転者による踏み間違い事故を未然に防ぐ新操作系「ステアリング・アクセル」を採用。超小型EVだけに車体は小さく、取り回しが容易で高齢者でも運転しやすい。高齢者による悲惨な交通事故が起こるたびに「高齢者に運転させるな!」との世論は盛り上がるが、公共交通機関だけで生活できる地域はごくわずか。

とりわけ過疎地では公共交通機関が廃止または大幅減便され、地元商店街も衰退。高齢者だけの世帯が自家用車なしに生活することは不可能に近い。従来の乗用車に替わる高齢者向けのモビリティー(移動手段)が必要になる。つまり、まもなく「団塊の世代」が後期高齢者となり、本格的な高齢化社会に突入する日本では「大いなるビジネスチャンスがある」といえるのだ。

超小型EVは高齢者人口が急増している日本でもニーズが期待できる(同社ホームページより)

地域電力会社の四国電力がFOMMに出資したのも、四国地方で高齢化が進んでいるため。四国電力はFOMMへの出資により、地域社会に適した新たなモビリティー・サービスの実現やEVを活用した新たな電力ビジネスの構築といった新事業展開を狙う。

さらに大きな展望も見えてきた。60万台以上のEVが販売されている中国市場だ。2019年4月、FOMMは中国三大自動車メーカーの一つである上海汽車グループの上海匯衆汽車製造有限公司とEVプラットフォーム共同開発契約を締結した。

中国製EVのほとんどは現地中小企業が生産する超小型EV。だが、中国製の超小型EVは品質問題を抱えており、現地行政が規制強化に乗り出している。とはいえ中国の大手自動車メーカーに超小型EVのノウハウはない。そこで高品質の超小型EVを開発するFOMMとの提携を選んだのだ。

中国市場が射程に入ったことで、国内外の企業からFOMMへの出資の動きはさらに加速するだろう。今後、どのような企業がFOMMと手を組むのか。ますます目が離せないEVベンチャーとなりそうだ。

文:M&A Online編集部