京都から世界に通用するインナーウェアブランドへ

1946年(昭和21年)6月15日。第二次世界大戦から奇跡的に生還した塚本幸一は、京都の自宅に戻ったその日から、婦人装身具の商売を始めた。これが、ワコールの創業である。

京都から国内首位の下着メーカーとして成功し、現在はグローバル展開を進めるワコールホールディングス<3591>のM&A戦略をみてみる。

【企業概要】創業当初の商号は「和江商事」

創業当初の商号は、「和江商事」。1949年(昭和24年)に、創業者塚本幸一の「日本女性を美しくしたい」という強い思いと、「ブラパット」が出会い、事業に決定的な飛躍をもたらした。1949年11月1日に和江商事株式会社を設立し、1957年(昭和32年)にワコール株式会社と改称され現在に至る。

ワコールの企業集団は、持株会社(当社)1社、子会社58社及び関連会社9社で構成され、インナーウエア(主に婦人服のファンデーション、ランジェリー、ナイトウエア及びリトルインナー)、アウターウエア、スポーツウエア、その他の繊維製品及び関連製品の製造、卸売販売及び一部製品の消費者への直接販売を主な事業としており、更にその他の事業として、飲食・文化・サービス及び内装工事等の事業を展開している。

ワコールホールディングスの主なブランド

ブランド名カテゴリ
アンダーウェア バイ シーダブリューエックス[UNDER WEAR BY CW-X] ジムウェア(ウィメンズ)
アンフィ[AMPHI] 女性下着
ウイング[Wing] 女性下着
ウンナナクール[une nana cool] 女性肌着
サクセスウォーク[SUCCESS WALK] コンフォートシューズ
シーダブリューエックス[CW-X] ジムウェア(メンズ)
ハンロ[HANRO] 高級下着
ワコールスイムウェア スイムウェア
ワコールベビー マタニティー&ベビー

M&A Online編集部作成

【経営陣・株主構成】創業家2代目はホールディング社長に

ワコールホールディングスの代表取締役社長である塚本能交氏は、創業者である塚本幸一氏の長男(2代目)である。1948(昭和23)年1月29日生 京都府出身。グループ全体を統括している。中核事業会社のワコールは、安原弘展氏が創業家以外からは初の社長として2011年4月、社長に就任した。

ワコールホールディングスの株主構成

大株主名所有株式数(千株)所有株式数の割合(%)  
株式会社三菱東京UFJ銀行 6,990 4.87
明治安田生命保険相互会社 6,100 4.25
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 5,243 3.65
株式会社京都銀行 4,705 3.28
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 4,510 3.14
日本生命保険相互会社 3,672 2.56
株式会社滋賀銀行 3,646 2.54
三菱UFJ信託銀行株式会社 3,050 2.12
第一生命保険株式会社 2,732 1.90
旭化成せんい株式会社 2,482 1.73
43,131 30.08

2016年3月31日時点

【M&A戦略】同業を中心に売れっ子ブランドを買収する堅実派

2004年2月に自然派化粧品の販売を行うハウス オブ ローゼ発行済株式総数の20%を取得。コラボレーションによる新業態店舗の開発並びに当社ウエルネス事業における新事業開発などの面において、相乗効果が大いに期待できると判断し、資本業務提携の合意に至った。

2006年6月にピーチ・ジョンの発行済株式の49%を取得し、業務提携を開始。百貨店やGMS等への卸事業に強く、幅広い年齢層をターゲットとするワコールと、通販事業や直営店事業に強みを持ち、感性の高い商品を生み出し10代-20代女性からの支持を得ているピーチ・ジョンとが結合することで、効果的に経営資源を投下し、国内市場の急激な変化に対応するとともに、両社が協力して海外展開を図ることで、当社グループとしての更なる成長が成された。

2009年8月には株式交換によりルシアンをワコールホールディングスの完全子会社とした。ルシアンは、昭和8年にレース素材を含む繊維・雑貨等の輸入販売を行う「野村商店」として創業し、昭和 21 年に株式会社としてレース・服地等繊維製品の卸売・輸出入業を再開、その後、インナーウェアやアウターウェア、手芸材料を中心としたホビー事業等の分野へ事業を拡大していた。

アパレルメーカーや小売業者など、異業種企業による新規参入が増えることにより、企業間競争が激化。これまでワコールグループの主力であった高機能・高付加価値の商品とは違った、比較的価格が低くかつファッション性の高い商品を中心とした新しい市場が拡大した。ワコールグループが国内インナーウェア市場における成長を維持していくために、新しい市場でもワコールグループが存在感を示し、これまでとは違った商品、販売方法・チャネル、価格戦略で臨むことが必要となったことから、ルシアンとの間で株式交換を実施した。

2012年には、Eveden Group Limited(本社:英国ノーサンプトンシャー州)の全株式を200億円程で取得し、子会社化した。Eveden社は、英国に本社を置く女性用インナーウェア・水着製品を製造販売する企業群であり、英国を中心に欧州、北米、豪州、アジア等、50 を超える国々で 5,000 以上の販売網を有している。Eveden 社の買収は、グローバル化への加速と中期経営計画の達成に大きく寄与するものであった。

2015年4月には、三愛及び三愛スタイルより、水着事業及び下着事業を譲り受けた。三愛グループは株式会社リコーの 100%子会社であった。国内ファッション水着販売業では最大手であり、三愛水着イメージガールを用いた広告・販促活動ともあいまって、高い知名度を有していた。

ワコールの主なM&A

年月内容
2004年2月 ハウス オブ ローゼ発行済株式総数の 20%を取得。基幹ブランドであるワコール、ウイングを中心としたインティメートアパレル事業において顧客との接点拡大と顧客サービスの向上を図る一方、ウエルネス事業においては提供価値を「快適」と「健康」に絞りこみ、それぞれのテーマに基づき自社の持つ商品ジャンルを組織横断的に活用したり、また異業種とのコラボレーションを推進することなどにより、顧客との接点である売り場を新しく編集していくもの。ハウス オブ ローゼは独自の商品企画・開発による自然志向の基礎化粧品、ヘアケア・ボディー・バスプロダクツ等を直営店舗で販売していますが、同社の商品ラインは当社の推進する「快適」や「健康」といった顧客への提供価値と視点を同じくするものである。また、両社の顧客ニーズに対応した商品・サービスの企画開発力とも合わせ、コラボレーションによる新業態店舗の開発並びに当社ウエルネス事業における新事業開発などの面において事業上の相乗効果が大いに期待できると判断し、資本業務提携の合意に至った。
2005年10月 全事業を会社分割により分社し、持株会社体制へ移行することを決議。会社分割により当社は持株会社に移行するが、社名を「株式会社ワコールホールディングス」に変更し、引き続き上場会社となる。
2006年6月2006年6月ピーチ・ジョンの発行済株式の 49%を取得し、業務提携を開始。ピーチ・ジョンの独立性を保ちながら、必要な人材の派遣や情報の提供を行う一方、ピーチ・ジョンの強みである通販事業や直営店事業について協力を得てきた。その中で、今後、両社の提携をますます深め、経営資源の有効的活用を図ることで、それぞれの事業を補完し国内・海外の市場における販売拡大が可能となると判断したため、2008年1月に株式交換によるピーチ・ジョンの完全子会社化により、経営の一体化を進めることとなった。百貨店やGMS等への卸事業に強く、幅広い年齢層をターゲットとする従来からのワコールと、通販事業や直営店事業に強く、感性の高い商品を生み出しヤングやヤングキャリア層から高い支持を得ているピーチ・ジョンとが結合することで、効果的に経営資源を投下し、国内市場の急激な変化に対応するとともに、両社が協力して海外展開を図ることで、当社グループとしての更なる成長が成された。
2009年8月 株式交換によりルシアンをワコールホールディングスの完全子会社とした。ルシアンの株式は、大阪証券取引所において上場廃止となった。アパレルメーカーや小売業者など、異業種企業による新規参入が増えることにより、企業間競争が激化。そうした反面、企業間の競争により市場が活性化され、これまでワコールグループの主力であった高機能・高付加価値の商品とは違った、比較的価格が低くかつファッション性の高い商品を中心とした新しい市場が拡大した。ワコールグループが国内インナーウェア市場における成長を維持していくために、新しい市場でもワコールグループが存在感を示し、これまでとは違った商品、販売方法・チャネル、そして価格戦略で臨むことが必要となった。すでに実施したピーチ・ジョンの子会社化は、こうした経営課題の取り組みの一環であり、より広い領域での事業拡大に向けて、ルシアンとの間で株式交換を実施することなったものである。一方、ルシアンは、昭和8年にレース素材を含む繊維・雑貨等の輸入販売を行う「野村商店」として創業し、昭和 21 年に株式会社としてレース・服地等繊維製品の卸売・輸出入業を再開、その後、インナーウェアやアウターウェア、手芸材料を中心としたホビー事業等、事業分野を拡大し、経営理念として「衣文化の向上及び私達の活動を通じて、ひとりでも多くの女性を美しく幸せにします。」を掲げ、事業活動を行ってきた。衣料品市場の環境が大きく変化する中、近年は、自社ブランドでの販売に加えて、企画力や技術力を活かしてのOEMによる商品供給等に注力してきたが、売上高の減少傾向が続いており、経済環境の悪化による衣料品消費の低迷から、同社を取り巻く環境は厳しさが増していた。ルシアンは、今後売上の増進を図るために販売面での効率化や合理化に取り組み、企画力や技術力を最大限に活かして、企業価値を向上していくことを踏まえ、単独での成長戦略を描くよりも、ワコールホールディングスの完全子会社として新たな成長戦略を描くことが最良であると判断したものである。
2012年4月 英国をはじめとした欧州、北米、豪州、アジア等において女性用インナーウェア、水着製品を製造販売する Eveden Group Limited(本社:英国ノーサンプトンシャー州、以下「Eveden 社」という)の全株式を200億円程で取得し、子会社化。Eveden 社は、英国に本社を置く女性用インナーウェア・水着製品を製造販売する企業群であり、英国を中心に欧州、北米、豪州、アジア等、50 を超える国々で 5,000 以上の販売網を有している。同社は、幅広い体型やサイズに対応した、高品質でファッション性の高いランジェリーや水着を製造する優れた技術を有しており、1920 年代の創業時から長期に亘り顧客から高い評価と信頼を得ている。このような明確なブランドコンセプトから、欧州市場を中心に強固な事業基盤とブランド力を確立しており、今後成長が期待される北米、豪州、アジア等の海外市場においても更なる業績拡大が期待される。欧州市場及び今後成長が期待される北米、豪州、アジア市場等において優れたプレゼンスを発揮している Eveden 社の買収は、グローバル化への加速と中期経営計画の達成に大きく寄与するものであった。将来的には、両社の販売ルート、技術、経営ノウハウ、ブランド力を相互に有効に活用することでターゲット顧客層の拡大が図れるなど、大きな相乗効果を得た。
2015年4月 三愛及び三愛スタイル(以下、「三愛グループ」という)より、水着事業及び下着事業を譲り受けた。本事業を継承するため、当社の連結子会社である株式会社ワコール傘下に 100%子会社である新会社を設立。三愛グループは株式会社リコーの 100%子会社であり、三愛銀座本店等の大型店運営事業、水着事業、下着事業、アパレル事業を運営。水着事業は、「三愛水着楽園」を全国に展開、企画・開発機能を持つ国内ファッション水着販売業では最大手であり、三愛水着イメージガールを用いた広告・販促活動ともあいまって、高い知名度を有していた。一方、下着事業は、小売店舗「northerly(ノーザリー)」を全国に展開しており、主に 18~24 才の顧客の支持を得ていた。この事業譲受により、新たにファッション水着市場を事業領域に加え、ワコールグループの持つ流通チャネルなどのネットワークを活用することで、顧客との接点拡大が成された。また当社の海外基盤を活用した国外、特に中国や東南アジアでの販売にも成功した。