ユニゾHDによる買収提案者らへの不支持表明

ホテル・不動産事業を行うユニゾホールディングス(以下「ユニゾHD」という。)は、エイチ・アイ・エスによる事前の同意のない公開買付けに対して反対の意見表明を行っていたところ、その後、ソフトバンクグループ傘下の投資ファンドである米フォートレス・インベストメント・グループ(以下「フォートレス」という。)がホワイトナイトとしてユニゾHD株式の公開買付けを行い、ユニゾはこれに対して賛同及び応募推奨の意見表明を行っていた。

しかし、ユニゾHDは9月27日、一転してフォートレスによる公開買付けに関して賛同及び応募推奨の意見を撤回し、意見を留保する旨を決議した。また、ユニゾHDは、フォートレス以外にも、「グローバルに認知されている世界最大手の投資ファンドである第三者」(以下「買収提案第三者」という。)から買収提案を受けていたところ、同日、同提案に対しても応諾しないことを決議した。

このようにユニゾHDがフォートレス及び買収提案第三者(あわせて以下「買収提案者ら」という。)のいずれの買収提案にも応じなかった主な理由は、同社が同じく9月27日に公表した「当社への買収提案に対する対応の基本方針」(以下「基本方針」という。)に沿うものではなく、ユニゾHDの企業価値維持向上に資するものではないと判断したためである。

基本方針とこれを踏まえたユニゾHDによる買収提案者らに行った提案は、以下に述べるように「企業価値」の内容として、従業員の雇用確保を極めて重視するものであった。

本稿では、本年6月に策定公表された経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」(以下「在り方指針」という。)も踏まえて、M&Aにおいて実現されるべき「企業価値の維持向上」の内容として、どこまでステークホルダーである従業員の利益を重視しうるか、検討を試みたい。なお、本稿は公表情報のみを前提とするものである。

買収提案に対する対応の基本方針の概要

9月27日付プレスリリース「当社への買収提案に対する対応の基本方針について」によれば、ユニゾHDは、「当社がスポンサー候補者による当社の買収を通じて実現したい価値を改めて明確にし、株主共同の利益の確保及び当社の企業価値の維持・向上に資する買収提案を受けることができるようにするとともに、当社に対する買収の実施又は提案がなされた場合において、当該買収提案に対して恣意性を排除した公正な判断を行い、もって株主共同の利益の確保及び当社の企業価値の維持・向上を実現することを目的として」基本方針を策定している。そして、ユニゾHDは買収提案が行われた場合は、基本方針に従って検討し、対応を決定するとしている。

基本方針の概要は次のとおりである。すなわち、ユニゾHDは、買収提案がなされた場合、「広義の企業価値」の観点から検討を行い、意見を決定する。「広義の企業価値」は、①株主共同の利益及び②狭義の企業価値で構成され、いずれをも満たすことが買収候補者選定上の必須事項とされる。

まず、①「株主共同の利益」に資するか否かについては、株式の取得の対価が最も重要な要素であり、これが高額であるほど、株主共同の利益に資する買収提案であると判断することとなる。

次に②「狭義の企業価値」に資するか否かについては、ユニゾHDの「企業価値の源泉であり、重要なステークホルダーである従業員の雇用が確保された上で、働きがいのある企業であり続けることが重要」であり、「本買収提案が当社の企業価値の維持・向上に資するものであると判断するためには、当社の従業員の雇用が確保された上で、従業員にとって働きがいのある企業であり続けることを確保できる『仕組み』が採用されている必要がある」とする。

基本方針を受けたユニゾHDの提案内容

このような基本方針のもと、ユニゾHDは、買収提案者らそれぞれに対して、狭義の企業価値を実現する「仕組み」として、主に以下の事項を求めている。

①買収提案者らは、ユニゾHD及び従業員持株管理会社(ユニゾHD従業員のみを株主とし、公開買付け実施後に公開買付者となる買収SPCの持分を取得し、保有することを目的として設立された法人。以下「従業員持株管理会社」という。)の事前の同意なくユニゾHDの中期経営計画を変更することができず、ユニゾHDは、従業員持株管理会社の事前の同意を得たうえで、ユニゾHDの裁量により、物件の新規取得及び売却をすることができる。
②完全子会社化後のユニゾHDの取締役に関しては、買収提案者らが、従業員持株管理会社の事前の同意を得たうえで、全ての取締役を指名できる。
③ユニゾHDの従業員について、現在の水準と同等以上の労働条件で雇用を維持し、また、ユニゾHDの従業員に対して、従業員持株管理会社の株式を取得する機会を与える。
④買収提案者らは、完全子会社化後速やかに、従業員持株管理会社に対して買収SPCの持分を取得させる。
⑤ユニゾHDは、本完全子会社化の完了後 、本買収SPCに対して、IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)年率20%をベースとした配当を実施するものとし、具体的な時期及び方法は従業員持株管理会社が決定する。
⑥買収提案者らがExitをするときには、株式の売却、再上場その他一定の方法のうち、従業員持株管理会社が選択する方法により、これを実施することを確約する。

ユニゾHDの以上の提案について買収提案者らが合意しなかった結果、ユニゾHDはフォートレスによる公開買付けへの意見留保、買収提案第三者による買収提案への謝絶に至っている。