1. レノによるヨロズへの買収防衛策廃止提案

投資会社「レノ」が、自動車部品メーカーのヨロズ(東証一部)に対し、買収防衛策の廃止を求める株主提案を行ったのに対し、ヨロズは、レノの株主提案について「適法性に疑義がある」として、定時株主総会の議案として取り上げなかった。

レノはこれを受け、本年5月10日、当該株主提案の議題等を招集通知に記載することを求める仮処分命令申立てを行ったが、東京高裁は同月27日、レノ側から出ていた即時抗告を棄却した。

東京高等裁判所が即時抗告を棄却した理由は、大要、買収防衛策の廃止は取締役会の権限であって、株主総会の決議事項とすることはできず、したがってこれを議案とする株主提案権の行使も認められないというものであった。

わが国における買収防衛策は、2000年代前半から導入され始め、これに関する議論も2000年代半ば頃までは盛んであったが、その後は後述のように導入している会社は減少傾向にあり、近年では話題にされることもあまりなくなったが、そのような中で、買収防衛策にフォーカスがあたった珍しい事例といえるのではないだろうか。

2. 買収防衛策の最近の状況

茂木美樹・谷野耕司「敵対的買収防衛策の導入状況―2018年6月総会を踏まえて―」(旬刊商事法務2185号)19頁によれば、買収防衛策を導入している会社は2010年7月末の542社から、2018年7月末の386社へと大幅に減少している。また、同文献は、廃止した会社の株式保有状況は、50%を超えるかそれに近い機関投資家保有比率と想定され、株主総会における賛成票の確保が困難である可能性のあることが廃止した理由の一つと指摘する(前掲茂木・谷野同頁)。

機関投資家の買収防衛策に対する見方は極めて厳しい。主要な国内機関投資家の買収防衛策導入・継続議案に対する賛成率はおおむね10.1%に過ぎず、海外機関投資家にあってはほとんどが反対の議決権行使がなされているとされている(前掲茂木・谷野22頁)。改訂スチュワードシップコードにより機関投資家の議決権行使の結果、個別開示が求められるようになったことや、ISS等の議決権行使助言機関による反対推奨が大きいが、実質的な理由としては、買収防衛策が現経営陣の保身目的で運用されるおそれがあるからであると思われる。

このような近年の状況からすると、おそらく本年も買収防衛策を導入している会社はさらに減少することが予想される。

3. 事前警告型買収防衛策

このように買収防衛策は機関投資家から厳しい目を向けられているが、日本企業に広く採用されているいわゆる事前警告型買収防衛策では、経営陣の保身の目的を実現できるわけではない。

事前警告型買収防衛策は、買付者が突如として公開買付けや市場での取得による大規模買付けを始めたことにより、一般株主が買付けに応じるか、又は買付けに応じず、現経営陣を支持するかどうかについて、十分な検討を行う機会を損なわれることのないように、事前に情報提供と協議の機会を求めるという、いわば「時間稼ぎ」の手段に過ぎない。

この点は買収防衛策を欲する経営陣にも誤解され続けているところではないかと想像するが、事前警告型買収防衛策は、例えば、大規模買付者がひとたび現れ、現経営陣にとって望ましくないと判断すれば、ただちに当該買付者の持株比率を大幅に希釈することができる差別的行使条件付新株予約権の発行などの対抗策を講じることができるといったような、敵対的買収防衛(裏を返せば現経営陣の地位の安全)という意味で強力な効果を期待できる設計にはなっていないのである。

仮に買収防衛策の内容をそのような設計にしようとしても法的には困難であり、そのような対抗措置を発動しようとしたとしても、ただちに差し止められてしまうであろう。レノが廃止を求めたヨロズが導入している事前警告型買収防衛策にしても同様であり、極めて一般的な内容のものと言え、例えばレノが買増しを行ったとしても、容易に排除できるようなものではない。