​義を果たす勇気とは?|M&Aに効く論語7

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コンプライアンスは義か?

 義は、古くさい考えでしょうか。古くさい義の捉え方では、いまを生きる私たちにはピンと来ないのも仕方がないことです。

 それでいて、義は仁の中に含まれていると考えられているので、仁=ビジョン・ミッションとすれば、義もまた、ビジョン・ミッションの違う側面なのです。

 どんなに優れたビジョン・ミッションだと自分で思っていても、現実としては抗いようのないことも存在していますし、人としてこの世で許されている行動の範囲もあるので、それを超えることは許されません。あえて超えていこうとすれば、対立が起こります。それを乗り越えて、仁を実現していかなければなりません。

 たとえば、古い仁義の世界にある人たちがいたとして、どれほど過去の意味での仁義を重んじても、現在の法律では反社会集団であることそのものが違法です。社会から否定されるわけで、反社会の人たちと仕事をすることもダメなのです。

「彼らは犯罪者かもしれないが、いい人なんです。仁義があるんです」と主張したところで、ビジネスはできません。

 仁はその人が行くべき道を示しています。義は社会(この世界)が進むべき道を示しています。これが合致していることが望ましいのです。

 現実には、必ずしもみなさんの仁が、義とうまく折り合えているとは限らないでしょう。仁は義とともにあってはじめて役立つので、自分のミッションやビジョンを、社会に受け入れられるようにする努力が求められます。

 この点で、いわゆるコンプライアンスは狭い意味では、現代の義です。でも、義はもう少し広い。人それぞれの立場で義があるとすれば、関係している人たちの義のあり方をよく知って、できるだけそこにふさわしいように調整していくことも求められるのです。

舛本 哲郎 (ますもと・てつろう)

1957 年横浜生まれ。日本大学経済学部卒。物流・流通専門誌、ビジネス誌「ウェッジ」、金融専門誌などの編集・記者、経営専門誌の編集長を経て、2017年より、総合情報サイト「かきっと!」編集長、直販サイト・イリヤEブックス主宰。愛玩動物飼養管理士(ペットケア・アドバイザー)。


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利とは利益、主に自分にとっての利益。論語は正しい利益はどんどん得てよい、むしろ利益を得なければならないと捉える。ただし「利を見ては義を思い」だ。「自分の利益になるので、ぜひやりたい」と思ったとき、同時に「義」を思ってほしいと孔子は言う。

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