会社を売却する時、検討すべき相続対策とは?|生命保険を活用したM&Aの出口戦略(1)

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M&Aの「出口」戦略…相続対策も検討課題の一つに(写真はイメージです)

2015年に相続税の基礎控除が変更された。

2015年以前の相続税の基礎控除は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」だったが、2015年からは「3000万円+600万円×法定相続人の数」に変更になった。

4割も控除が削減されたことになる。この影響で相続税を支払う人は、今までは4%前後で推移していたが、現在は8%前後で推移している。

このデータから以前に比べて相続税を支払う人が増えたことが分かる。M&Aで会社を売却したオーナーの場合、相続税を支払う確率は一般の人よりも高くなる傾向にある。M&Aで事業を売却したオーナーは、特に相続税対策についてしっかり考えておく必要がある。そこで今回は、生命保険を活用した相続税対策について解説する。

参考:https://www.nta.go.jp/

節税に効果的な「一時払終身保険」

M&Aにより事業を売却した場合、通常、中小企業のオーナーの場合、自社株のほとんどを保有しているケースが多い。

自社株を買い手企業に売却することにより多額の資金が手元に入ることが一般的だ。自社株の相続の場合は事業承継税制の改正によって様々な特典があるのに対して、現預金の相続の場合、そのような特典はない。

多額の現預金を保有したまま相続が発生すると、遺族は多額の相続税を納めなくてはならない。現預金は、基礎控除以外相続税の控除はないので、多額の現預金を保有している場合、相続税の対策が必要になる。

相続税対策には様々な手法があるが手軽に実行することができ、効果が高い相続税対策は生命保険の活用だ。

生命保険の中には、一時払終身保険というものがある。一時払終身保険とは、通常の毎月や毎年保険料を払う保険ではなく、保険料を契約時に一括で納める保険のことをいう。

一時払終身保険の中には様々な商品があるが、相続税対策でおすすめなのがレバレッジの効く一時払終身保険だ。

レバレッジの効く外貨建て商品

レバレッジは、梃子の原理のこと。この場合のレバレッジは、支払った保険料対比、万が一のことがあった時の保険金が殖えることを意味する。レバレッジの効いた一時払終身保険を利用すれば、現預金で保有している場合よりも多くの資産を遺族に残すことができる。

しかし、多くの資金を残すことができるということは、相続税の金額も大きくなるのではないかと思う方もいるだろう。

もちろん、残す金額が大きくなれば支払う相続税の総額は大きくなる。しかし、相続税に限らずどの税金でもそうだが、増えた分のすべてを税金として支払うわけではない。また保険には、「死亡保険金の非課税枠」というものがある。

死亡保険金の非課税枠とは、「500万円×法定相続人」の金額を相続財産から控除される制度だ。仮に3人の相続人がいた場合、500万円×3人で1500万円分を相続財産から控除することができるのだ。

現預金の場合は、このような控除制度がないので、死亡保険金の非課税枠があることも生命保険を利用した相続対策をおすすめする理由になる。

レバレッジの効く生命保険には様々な種類があるが、円建ての商品だけでなく米ドル建てや豪ドル建ての商品もある。米ドルや豪ドルの商品は円に比べて金利が高いので、より大きなレバレッジが効くことが一般的だ。

米ドルや豪ドルの場合、為替の変動リスクもあるが、大きなレバレッジが効けば多少円高になってしまっても十分大きな効果を得ることができるだろう。

中小企業オーナーにとって相続税対策は今後ますます必要になってくることが想定される。今回紹介した生命保険を活用した相続税対策を検討してみてはいかがだろうか?

文:M&A Online編集部

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