日本総合研究所が10月に「業種別にみた人手不足の見通しと課題」と題するレポートを発表した。人手不足の深刻度合いについて業種間で格差があると指摘し、今後5年間の就業者数の変化を業種別に試算している。 地場の企業を訪問する機会の多い私にとっても興味深い内容だった。

人手不足が深刻な「専門技術サービス・情報通信」「医療福祉」

同レポートは、人手不足の先行きを左右するポイントとして、①就業者の高齢化、②業種をまたぐ転職の動向、③失業者や求職活動はしていないものの就職希望のある「潜在失業者」などの未活用労働力、の3つを挙げている。現在労働力として認識されている層の年齢の推移、また人材の流動性の動向などが大きく影響するとのことである。

これらを踏まえて就業者数の試算結果によると、まず「専門技術サービス・情報通信」が大幅に人材減となり、人手不足感が急速に強まるとのこと。今後、DX(デジタルトランスフォーメーション)環境構築が急務となる日本企業において、人材需要の増加は不可避であるにも関わらず、異業種への人材流出が続いており、早急な対応が必要となっている。

レポートはまた、「医療福祉」は女性の労働市場参入や新規入職者の増加が頭打ちとなり、一方で急速な高齢化で介護需要は増加するため、人材供給が需要増に追い付かない状況とみている。

他方で、「宿泊飲食・卸小売」では、過去5年間を大幅に上回るペースで就業者数が増加すると試算。これは、アルバイトなどの短時間労働者が増加するという背景がある。アルバイトの人材確保難は、企業努力によって明暗がはっきりと違いが出ており、省人化や営業時間の見直しなど、生産性の向上を図らないと慢性的に人手不足が続く状況にある。

技術革新によるカバーが見込まれる製造業、建設、金融保険

 製造業・建設・金融保険業でも、就業者数の減少が見込まれている。しかしながら、これらの業種では、技術革新(製造業のロボット活用・IoT化、建設業のドローン、金融保険のRPA活用など)の恩恵によって、他業種に比べ人手不足の深刻度は回避できる可能性があるとのこと。

製造業・建設業は、地方では中心的な業界でもあるため、私も話を聞く機会は多いが、やはり取引先からの高い要求水準をクリアするためには、定期的な最新機械設備への刷新が必要となり、機械設備の導入と同時に人材の配置転換や、製造原価上の労務費の削減などを行い、人手不足対策をする企業も多い。

ただし、これも現場感覚であるが、設備投資を行うだけの体力と、将来に対する危機感を持っている経営者がいるかどうかで大きく命運が左右されると思われる。最近では、中小の製造業の間でも、将来を見越して体力のあるうちに自社のM&Aの売りを検討したり、逆に人材不足をM&Aの買いで対策を検討する地方企業も少なくない。

中小企業に求められるもの

 最後にレポートでは、企業に求められる対応として、①高齢化への対応、②異業種を視野に入れた人材募集、③省人化に向けた取り組み強化、の3点を挙げている。

私は、もう1点、上記すべての取組にも共通するものでもあるが、「誰もが楽しく働きやすい環境整備」を追加したい。働き方改革は、とかく労働者側の観点が中心ではあるが、さらに広い視野で、経営者側も労働者側も同じ方向の目線で「魅力ある企業」を目指せるような前向きな雰囲気と制度を作るべきだと思う。

そのためには、本当に自社が顧客に提供すべき「価値」は何なのかを考え、顧客や周辺業界の人材が「その会社で働いてみたい」と思うようなサイクルを作ることが今後非常に重要だと思われる。

文:認定事業再生士(CTP)  菅井啓勝