どの業界にも自分たちは日常的に普通に使っているが、別の業界や業種の人が聞くと「んっ!どういう意味?」となってしまう専門用語や語句があるもの。M&Aの世界にも実はいろいろある。自戒を込めつつ、いくつかを紹介したい。

「M&Aブティック」と自己紹介したものの…

1.M&Aブティック

筆者が若かりし頃の話を一つ。何人かの仲介業者を経て初対面のクライアントに「M&Aブティックです」と自己紹介したところ、洋服の仕立て屋さんに間違えられたことがある。道理で話が噛み合わないわけだ。

よってそれ以降は「M&Aアドバイザー」と名乗るようにしている。ちなみに本来の意味は、M&Aアドバザリー業務を専門に手掛けるファームのことを指す。ファームとは杭に囲まれた牧場をイメージすれば合点がいく。つまり、法律事務所(箱)のこと、あるいはその中をウロウロしている専門家達のことです(失礼)。

2.LOIとMOU

Letter of IntentとMemorandum of Understandingの略。

若い業界人が「ロイ」とか「モウ」とか言っている機会に出くわすことがあるが、一般のお客様には普通に「基本合意書」と申し上げておけば、それで足りると思う。

これも昔の話ながら、たくさんの横文字を並べて「ロイの一番の目的は…」と何回も何回も「ロイ、ロイ」を連呼するアドバイザーがいた。同じ交渉の場に私は買手アドバイザーとして同席していたが、「ロイ、ロイ」がいつの間にか「ルイ、ルイ」に聞こえてきて、往年のヒット曲のメロディーが頭から離れなくなった記憶がある。

もちろん「モウ、モウ」の連発なんて言語道断ですよね。

「アサイン」とは「朝イン」?

3.アサイン

案件やプロジェクトのメンバーに選ばれる(指名される)ことをいう。最近は、業種なども関係なくプロジェクトがはやっているので一般の事業会社でも使用頻度が高くなっている。下記は十数年前に実際にあった会話。

A部長 : 今回のプロジェクトはどのようなメンバー構成にしましょうか?

私         : 今日、出席されている方は全員アサインして下さい。

B次長     :  えっ!?朝インしろと??それは何時ですか?

私          :  低血圧の方でも大丈夫な時間に設定しますよ(笑)

実は今、思い出しても我ながら気の利いた切り返しだったと自画自賛している。

4.コンフリクト

M&Aの世界では「利益が相反する」場面で使用されることが多い。本来の日本語としては「葛藤」がおそらく正しい。なので、一般の事業会社でも部署と部署、上司と部下などの関係において対立している状態を「コンフリクト」と言うこともある。同義語としては、「フリクション」(こちらは摩擦)もよく使われる。

今でこそ立派なビジネス用語の「キックオフ」

5.キックオフ

新しいプロジェクトなどの活動をスタートさせることや、そのための関係者の顔合わせのミーティングのことをいう。今でこそ一般の会社でも使用頻度が高いため、意味は通じるが、過去にはこんな例も。

A部長 :プロジェクトはいつからスタートさせましょうか?

私       :  まずは、来月の1日に関係者を集めてキックオフしたいと思っています。

B部長  :  みんなで結束力を図るということでいいですね。 サッカーにしますか? それともラグビーにしますか?

私        : (^-^;

こうしてみると、ビジネス上の日常会話として何気なく使っている言葉や用語も関係性の薄い人たちからすると理解できなかったり、意味不明だったりしているのかもしれない。

文:Antribe社長・小林伸行(M&A アドバイザー