昨年12月に、全国銀行協会と日本商工会議所は、経営者が代替わりした後でも金融機関が新旧の経営者に融資債務に対する個人保証を求めることを原則禁じる指針「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」を発表した。

2020年4月から適用へ、強制力は持たず

特則は、全銀協と日商が2013年に策定した「経営者保証ガイドライン」を補完する位置づけで、2020年4月から適用するとのことである。

新旧の経営者(創業者の親父と2代目の後継者の息子など)に個人保証を求めることを「二重取り」と呼ぶが、この二重取りは後継者の円滑な事業承継を妨げるものとして、政府の成長戦略でも見直しが求められている(2019年6月、内閣府公表の「成長戦略実行計画」に記載)。

今回の指針は、実際の強制力は伴わないが、金融機関に順守を求め、金融庁も尊重を呼びかける要請文を今後関係機関に送付する予定という。

円滑な事業承継を進めるうえで、この「二重取り」が課題となった背景、また、今後の個人保証の方向性を考えてみたい。

「経営者保証ガイドライン」とは?

そもそも経営者保証ガイドラインはどのようなもので、なぜ作られたのだろうか。

従来、中小企業の資金調達手段がほぼ金融機関による融資が主流の時代では、経営者による個人保証には経営への規律付けや信用補完としての機能があった。

私が金融機関に入社したのは(10年以上前)はちょうどリーマンショックが始まる直前で、リーマンショック後は金融円滑化法によるリスケジュールの業務をメインに事業再生業務に従事していた。既存融資の保証人に社長以外の役員となっていない家族や親族の保証(いわゆる第三者保証)も複数連帯保証人として当初より保証受入していたケースが多かったのを覚えている。

また、リスケを行う際でも、引き続き家族や親族の第三者保証を受入する場合、すんなりと納得されないケースもあり、苦労したことも少なくなかった。

このように経営が窮地になった際の早期の事業再生を阻害する要因となることや、個人保証があることで思い切った事業展開ができず活力を阻害している面もあり、様々な課題が存在していた。これらの課題へ対応するために、2013年に「経営者保証に関するガイドライン」が策定されたのである。

債権保全と事業再生をどう両立するのか?

具体的には、①法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと、②多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等を残すことや「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること、③保証債務の履行時に返済しきれない債務残高は原則として免除することーなどが定められた。第三者保証についても、上記の②③については経営者本人と同様の取り扱いとした。

これらは、あくまで「ガイドライン」であり、金融機関への強制力はない。私自身もこのガイドラインが当時現場で実際の実務に降りてきた際、「債権を守ること」と「企業を再生すること」の狭間で、20代前半の私はだいぶ頭の中が混乱したのを覚えている。

文:認定事業再生士(CTP) 菅井啓勝