経済産業省が11月19日、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書 ~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~」を公表した。

「法的」検証が足りず、商品化の断念・軌道修正も

GAFAに代表されるITプラットフォーマーの台頭やシェアリングエコノミーの潮流など、世界的なイノベーションによる大変革の中で、これらの勢いのある企業が革新的な事業と法規制の適合を図り、「法を使いこなす」ことによって新市場を創造し、利益の源泉を生んでいることに着目し、現在の日本においての「法務機能」を考え直す必要性を提言している。

 提言と同時に、同省は「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」を公表した。日本の企業経営の課題として既存事業の陳腐化による収益性の低下を挙げ、社会に新たな価値を提供し、新たな収益源となる「事業の創造」こそが重要だと指摘している。

しかしながら、ベンチャー企業のビジネスモデルはこれまでになかった革新的な内容を含むことがあるため、往々にしては法的リスクが付きまとう。企業経営者の中には、こうした法的なリスクを十分に検討しないまま、単にリスクが存在する可能性があることをもって、新規事業を断念するケースがみられると指摘している。

私も地域の企業で、ある程度既存の業界慣行や製品からはみ出した新規性を求めている、いわゆる「イノベーター企業」を支援することがあるが、確かに指摘の通り、企画している商品やサービスが法的に実現可能かどうかが十分に検証しきれず、断念や軌道修正をせざるをえないケースも多々存在する。特に地方企業にとっては、法務人材不足や同業者からの横並び意識など阻害要因も多い。 

 法務機能を使いこなすための7つの行動指針

このような企業にとって、どのように経営者が行動すべきか、以下の7つの行動指針が提言されている。 

1.経営者は、法務部門を「事業の創造」に貢献する組織にし、その貢献が発揮される環境を整備できているか?

 法務部門は単に出来上がった契約書案等を審査するのみの組織にするのではなく、他の部門毎の「リスクの除去・軽減」のために部門横断的に関与し協働する組織に変えるべき。

 2.経営者は、経営戦略における法務機能の活用に対するスタンスを明確にしているか?

「法務機能」は何のために会社にとって必要なのか、何を期待しているのかを経営者が明確に社員に伝えているか。

3.経営者は、“経営法務”を遂行できる高度な人材を経営陣の一員、かつ、法務部門の責任者として登用しているか?

経営者は漫然と年功序列的に資質に乏しい者を経営陣の法務担当者や責任者に据えていないか。

4.経営者は、法務部門の責任者との意思疎通を密にしているか?

 法務部門はいつ起こるかわからないリスクと向き合うため、常に経営者と信頼関係を構築している必要がある。

5.経営者は、“経営法務”により得ることができた新事業の創出や企業価値増大の効果を評価しているか?

経営法務によって得られた効果や企業価値増大について、正当に評価し、人事考課や報酬に反映することが必要。また、法務部門に十分な予算を配分することも重要。

6.経営者は。法的リスクを乗り越えてビジネスチャンスにつなげるため、自らの責任で合理的な経営判断ができているか?

経営者の経営判断は、重大な法的リスクの回避のみならず、リスクを超えた事業の創造につなげているか。

7.経営者は、“経営法務”人材の獲得・育成活用について戦略的な方針を示しているか?

経営法務の人材はビジネスと法務を融合したダブルの専門性が必要であり、人材の獲得・育成・活用のための戦略を持っているか。また、自身の後継のリーダーシップ人材を育てるプログラムを持っているか。

地域の課題を“超発想”で解決するローカルイノベーターが増加

急速な高齢化や人口減少が進む地方では、地域の課題を従来の常識や発想を超えた手法で解決する「ローカルイノベーター」が増えている。既存の制度や法律では解決できていない問題に対面している企業にとって、当然にやろうとしている事業は、現在の制度や法律と衝突する面も多い。

経営者は上記の行動指針にある通り、法務機能を使いこなすことは非常に大事である。同時に、このような経営者の努力を十分に認識し、あらゆる法律にかかわる人達、特に行政などは変化に寛容で柔軟な発想を制度・法律に反映させてほしいと願っている。

文:認定事業再生士(CTP)菅井啓勝