9月9日に上陸した台風15号は、千葉県や神奈川県を中心に甚大な被害をもたらした。特に千葉県では、強烈な風速による建物や畑などの物理的な被害に加え、停電の長期化により冷蔵庫が使えなくなったことが原因の食品在庫の処分など2次的な被害も多かったのが台風15号の経済的被害の大きな特徴である。

そして、今月にはさらに台風19号が襲来し、関東のみならず、東北地域にも主に水害を含め甚大な被害をもたらしており、2次災害など今なお緊迫した状況が続いている。

千葉・台風被害の反省

千葉県で企業支援を行う私が事業者へ最初に台風15号の被害状況を調査する中で、台風で停電を含めたこれだけの被害が出ると予想して対策を事前講じている事業者はかなり少なかった。それだけ千葉県は台風を甘く見てしまっていたところは、自分を含めて大いに反省し、今後同じような災害時に活かせるようにしないといけないと思った。

台風15号発生の1週間後に、私は被害の大きかった鋸南町の災害ボランティアに参加した。ボランティア作業内容は、南房総の名産でもあるカーネーション農業法人のハウスの復旧。ハウスは温室を保つためにガラス製だったが、今回の台風でほとんどのガラスが破損し落下していた。粉々になったガラスは土の中に潜り込んでしまって、とても家族経営の農家のみで拾いきれる量ではなかった。

鋸南町を含めた南房総地域は、都心への人口の流出が進み、労働人口減少と高齢化が深刻な課題となっている。今回の台風による今後の中小企業・農家の事業継続がより困難になってしまう危惧をこのボランティアで強く感じた。

被災した事業者が、いかにして事業再生を実現したかを東日本大震災の事例をもとに考えてみたい。 

【事例1】営業債権者と連携・協調による事業再生=物流会社

宮城県のとある物流(倉庫)業者は、大震災の罹災により数千万円にのぼる資産の毀損と事業再開まで6カ月を要する事態に陥ったほか、復旧に伴う借入金が増加し、資金繰りに窮した。

メインバンクは、一つの債務負担軽減の方法としてこの企業の事業提携先であった運送業者に交渉し、運送業者が保有していた営業債権の一部劣後化に導いた。この他、公的機関を活用した震災前債権の整理を実施するなど、財務内容の改善を行った上で、金融機関同士の協調融資を実行して事業活動に専念できる環境を作った。

この事例のポイントは、①提携事業先との連携・協力、②営業債権の劣後化であり、日頃から取引のある先との信頼関係の構築がいざというときに再建の手助けとなった事例である。  

【事例2】後継者への事業承継を企図した事業再生=ビジネスホテル

福島県のとある飲食店を併用したビジネスホテルは、大震災により店舗・建物が一部倒壊し、営業が一時停止した。その会社は、震災以前から将来の事業承継に問題を抱えていた。

代表者が90歳を超える高齢で、息子も61歳だったことから、従業員であった孫娘に事業承継を考えていたが、孫娘自身は頑なに固辞していた。震災後は、被害の大きさから、息子は事業存続を諦め、廃業も視野に模索していた。

メインバンクは、事業存続に向けた修繕資金支援や資金繰り支援を優先する一方、後継者候補である孫娘を含めた家族会議を何度も行い、孫娘を中心とした将来の事業再生計画を策定することが決定し、収益構造の見直しや土地・建物を含めた権利関係の整理、資本性借入を含めた事業承継にかかる融資等の計画を実行していった。

当初、事業承継に否定的であった孫娘が、会社の将来の収益の姿を想像できたことで、事業承継意欲が生まれたことが大きな成果につながった。

この事例のポイントは、①家族・後継者との面談、意思統一、②相続を含めた問題解決であり、震災を契機に「将来の課題」であったものが「今すぐ考えないといけない課題」として表面化し、家族一丸となり懸命に取り組んだ事例と言える。