帝国データバンクが今年7月に「M&Aに対する意識調査」を発表した。同調査によると、2019年6月時点で回答企業のうち35.9%が今後5年以内に「M&Aに関わる可能性がある」としている。深刻な後継者不足が背景にあると思われるが、事業継続の一つの手段としてM&Aが着実に浸透してきているともいえる。

「買い手企業として相手企業に対し重視すること」という調査項目をみると、最も回答が多かったのは「金額の折り合い」、次いで「財務状況」だった。買い手側として財務状況を重視するのは至極当然。では、売り手の立場として自社の財務状況に問題がある場合に会社を売却する方法はなくなってしまうのだろうか?

債務超過には2通りがある

まず、財務上の問題点で真っ先にあがるのが「債務超過」。債務超過にも、大きく分けて2つあり、「簿価債務超過」と「時価(実態)債務超過」がある。

簿価債務超過は帳簿上の純資産での債務超過であり、時価(実態)債務超過は基本的に時価純資産での債務超過を指す。時価純資産は、不動産や有価証券等を時価で評価し、また売掛金や在庫などに不良資産があった場合にそれらを控除した上での時価となる。

基本的に、債務超過会社は売却が困難であるという認識は持っておくべきである。債務超過とは株主の出資分が毀損している状況であり、元手が返ってこないリスクが高いと判断される。

債務超過会社がM&Aで敬遠される理由は、買った後に何か経営上の重大リスクが出てくる可能性があるのではという不安があるからである。帳簿に載っていない債務(簿外債務:デリバティブや保証債務など)や、訴訟リスク、反社会的勢力とのつながりなどがあり、そのような隠れた問題が実は債務超過の遠因だったのではないか、また事業継続の妨げに今後なるのではないか、と買い手は疑う。

債務超過でも売れるケース

では、時価(実態)債務超過であった場合に会社を売る方法はないのだろうか。

方法は2つ考えられる。一つめは営業権評価を加味して債務超過にしない方法。債務超過だとしても、営業赤字ではなく、将来の会社の評価を基に営業権のれん)の評価が出る場合が前提となる。ただし、債務超過の要因が赤字の累積である場合は、そもそも収益性がなく、営業権の評価が出ない場合がほとんどである。

二つめは会社事業の内、優良事業だけを部分的に売却する方法。この方法だと、優良な事業資産や経営資源自体は売りの値段が付くだろうが、問題は残ったいわゆる「悪い部分」。

債務超過会社から良い部分のみ切り取ったら、さらに債務超過の企業が残ることになる。基本的に金融機関や取引先などの債権者の同意がないと、こうした事業譲渡は難しい。同意なしに勝手に行うと、債権者から「詐害行為」として見られる恐れがあるからである。この事業譲渡の手法は、民事再生法など法的整理の後に、裁判所と債権者の同意を得てスポンサー企業に対して事業譲渡する場合が多く、法的整理前に債務超過状況での事業譲渡はなかなか容易ではない。